同性婚が認められないのは憲法に反するかどうかが争われている6つの裁判。全国の高裁で違憲判決が相次ぐ中、あす5月20日、高裁にすすんだ最後の1つの裁判が結審する。
こうした状況の下、最高裁判決に向けて支援の輪を広げようと、性的マイノリティ当事者や支援者でつくる全国25都道府県の団体がキャンペーン「結婚の平等にYES!」を展開している。
このキャンペーンは2023年、10地域で始まり、翌年には15地域に拡大。3年目となる今年は、さらに10地域が加わった。キャンペーンを呼びかけているのは、同性婚訴訟を支援している公益社団法人「Marriage For All Japan—結婚の自由をすべての人に」(マリフォー)。
マリフォーや、各地の団体の代表らは5月19日、東京・霞が関の厚労省記者クラブで記者会見を開き、同性婚実現に向けての課題や今後の展望について語った。
● 「ごめんなさいと泣いた子どもを笑顔にしたい」母親のうったえ
この日の会見で、岩手、千葉、静岡、三重、京都、香川、大分から、新規参加団体の代表者が登壇。性的マイノリティや同性婚への理解を深めるために、地元でどのような取り組みをおこなっているかを紹介した。
三重県で活動している「三重でYES!」の浦狩知子さんは、11年前に子どもから「性別に対する違和感や、同性が好きであること」をカミングアウトされたといい、次のように語った。
「子どもは泣きながら『ごめんなさい』と言いました。でも、このことを親に謝るのではなく、親が胸を張れるような社会にしなければ、子どもは笑顔になれない。法律を変え、社会を変えるしかないと思っています」
● 高裁判決が次々と「違憲判決」それでも動かない与党
同性婚をめぐっては、全国で6つの裁判が進行しており、これまでに5つの高裁で「同性同士が結婚できないことは憲法違反」とする判決が出ている。
しかし、裁判所による違憲判断が相次ぐ中、実現に向けた国会での議論は活発とはいえない。
マリフォーが開設している「国会メーター」によると、5割の国会議員が賛成しているが、政党別にみると自民党議員の賛成率は1割まで下がる。
こうした状況について、会見に参加したマリフォーの理事、松中権さんは「(自民党議員への)働きかけが重要ですが、なかなかお会いできないこともある。しかし、地域のさまざまなつながりで、全国の団体から地元で選出された議員にアプローチできるケースがあります。そうした意味でも、このキャンペーンは重要だと考えています」と話した。
●「反対してなくても、賛成には動かない層が多い」
また、自民党の国会議員や高齢者を中心に「伝統的な家族像」を維持するため、同性婚に否定的な意見があるという声も聞かれた。このキャンペーンでは、政治家だけでなく、地元の人たちからの理解や支援を得ることを目的としているという。
岩手県から登壇した「いわてレインボーマーチ」の凛月(りつ)さんは、無関心層が多いことを指摘した。
「同性婚に反対はしてなくても、賛成のアクションまでには結びつかない層がとても多いと感じています。そうした層が多い一方で、反対派の声は数は少なくても、非常に大きいです。
この大きな声に対抗していくためには、うっすら反対はしてない層という多くの人たちを取り込んでいければと思っています」