山形県米沢市の温泉旅館が2月16日、無断駐車されたことで駐車スペースがなくなり、日帰り入浴を休業することになりました。この日は日曜日で、旅館は20人ほどの日帰り入浴客を見込んでいたと言います。
旅館は、戻ってきた人に「営業妨害」になりうると厳重注意しました。今後の対策として「無断駐車したら罰金」の張り紙もつくりました。旅館の女将は「お金がほしいのではない。モラルを守ってほしい」と強調しています。
駐車場の持ち主からすれば、無断駐車はやめてほしいところです。はたして「罰金」の支払いまで求めることはできるのでしょうか。清水俊弁護士に聞きました。
●設定した金額の「罰金」を請求できるとは限らない
今回のケースで、旅館の言っている「罰金」は、私有地に無断で駐車されたことに対する損害賠償という意味だと思われます。無断駐車した人に対して、そうした賠償を求めることは可能です。
しかし、あらかじめ「罰金」を設定したとしても、その金額通りに請求できるとは限りません。日本では、実際に被った損害の賠償が基本的な考え方となるため、実損害を超えるような「罰金」の請求は難しいと思います。
駐車スペースに「罰金」を明示している場合、「無断駐車したら違約金として◯◯円支払う」という内容でに合意しているという主張も成り立ちえますが、契約成立そのものが否定されたり、仮に認められたとしても実損害を超えるような金額については公序良俗や信義則などのルールで調整されるのではないかと思います。
周辺の駐車料金の相場を基準として、違法駐車と営業休止との間に因果関係が認められれば、違法駐車の期間に応じて営業損害も認められる余地があると思います。
●バリケードで車を閉じ込めるのは「NG」
一方、無断駐車している車両が出られないようにバリケードなどで封鎖するような行為は、避けたほうがいいでしょう。
日本では、正式な法的な手続きによらずに自力で目的を達成することが原則禁止されています(自力救済禁止の原則)。無断駐車されているからといって、車両やその運転者の自由を奪っていいことにはなりません。
バリケードで拘束した時間の長さや目的、仮に「罰金」の請求が目的だとすれば、その金額などを考慮し、場合によってはバリケードをしたこと自体が民事上の不法行為として損害賠償の対象になるおそれもあります。
土地の持ち主ができる対策として、無断駐車禁止の貼り紙はもちろん、実際に無断駐車している車両がある場合は、車両の外観やナンバーを写真撮影したり、すみやかに退去するよう貼り紙をしたりするなどの対応が考えられます。無断駐車している期間の把握とその証拠収集もしておきたいです。