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相模原・両親殺害の16歳少年「自分が死ぬか、父母を殺すしかなかった」 横浜地裁で被告人質問
横浜地裁(弁護士ドットコムニュース撮影)

相模原・両親殺害の16歳少年「自分が死ぬか、父母を殺すしかなかった」 横浜地裁で被告人質問

昨年2月に神奈川県相模原市の自宅で両親を殺害したなどとして殺人と窃盗の罪に問われた少年(16)の裁判員裁判は2月5日、横浜地裁(吉井隆平裁判長)で被告人質問があった。

少年は小学生の頃、目の前で両親の性行為を見せられたことがあったといい、「すごく自分が汚いもののように思えた」と述べた。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●両親殺害を後悔

横浜地裁(弁護士ドットコムニュース撮影) 横浜地裁(弁護士ドットコムニュース撮影)

今回の裁判員裁判は少年事件のため、法廷では被告人の少年が傍聴席から見えないようにする遮蔽物が設けられている。

被告人質問で少年は、約4時間にわたり検察官や代理人弁護士からの質問に答えた。

父の殺害を決意する直前の心境について、「父に対する恐怖心や束縛感、小さい頃からのことがフラッシュバックして恨みが大きくなり、この底なしの恐怖感から逃れたいと思った。でも、人を殺すのはまずい、一線を越えてはいけないと葛藤しました」と話した。

両親を殺害したことへの現在の感情については、「正直複雑だが、父を殺してしまったのは大きな間違いだった。自分だけ自殺すれば解決した問題じゃないかと思う。(母の殺害は)父以上に後悔しかありません」と述べた。

一方で、代理人弁護士から「父も母もあなたも死なない選択肢はなかったのか?」と問われると、「そういう選択肢は考えられない。答えを見つけたいが、当時の自分の気持ちを振り返ると、どうしても自分だけが死ぬか、父母を殺す選択肢しかなかったと思う」と話した。

●身柄拘束が続く1年 「こんなに安定した生活はなかった」

横浜地裁(弁護士ドットコムニュース撮影) 横浜地裁(弁護士ドットコムニュース撮影)

親からの暴力や暴言以外につらかった経験を尋ねられると、少年は、小学生の頃母親と口論した際に「産まなければよかった」と言われた時のことを挙げた。

少年によると、母はその時、父が寝ている布団に入り、目の前で性行為する様子を少年に見せ、父が「お前もこうやってできたんだよ」などと言った。さらに、父は少年の頭を母の股間に押し付けたという。

そうした当時の経験について、少年は「そういうのを見ていると、すごく自分が汚いもののように思えてきますし、すごく軽いものなのかなと。それはすごくつらかった」と語った。

少年は最近になってこのエピソードを代理人弁護士に明かしたといい、その理由を問われた少年は「正直裁判で言う気はなかったが、全て語りたいなと思い、言いたくないことでも全部伝えようかなと思った」と説明した。

事件から約1年が経つ中、身柄を拘束されている今の生活についての質問には次のように話した。

「日々生きている上で衣食住の不自由はないが、束縛されている感じもない。精神面でも体調面でもこんなに安定した生活を送れたことはなかった。犯罪を犯したのにこんな生活をしていいのかなと思う」

●「父は本当はどんな気持ちだったのか気になる」

検察官による被告人質問では、少年が話す内容と関係者の供述との整合性に着目した質問が中心となった。

少年が志望する高校に合格した時、両親が生前やりとりした携帯電話の記録では、父が「自慢の息子だ」などと母に送っていたとされる。

この証拠について検察官が感想を尋ねると、少年は「父からそういうことを言われた記憶は全くない。高校に合格した時に父がうれしそうにしていたのを見たことはなかったので、本当はどういう気持ちだったのかなとすごく気になります」と応じた。

中学生になって父からの身体的な暴力がなくなった理由は「なんとも言えないが、小学生の頃に比べて自分の体格が大きくなったことが大きな理由じゃないかなと思います」と話した。

●将来の夢は「小児科医」

最後の裁判員や裁判官による質問では、少年は将来の夢を「小児科医」としたうえで、「病気にかかっている子どもはすごく孤独なんじゃないかなと思う。寄り添ってくれる人が一番必要な存在。自分も小さい頃孤独だったので、そういった子に寄り添える人間になりたい」と話した。

起訴内容によると、被告人の少年は当時15歳だった2024年2月10日、自宅で父親(当時52歳)を刃物で多数回突き刺し死亡させ、その後帰宅した母親(当時50歳)も首を絞めたり刺したりして殺害した。

また、事件前の2月6日と同10日に相模原市などのコンビニ2店でおにぎりやペットボトル飲料などを万引きしたとして、窃盗罪でも起訴されている。

2月6日は証人尋問が実施される予定。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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