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仕事中に何度も「コーヒーブレイク」する女性、おじさんは「タバコ休憩」へ…サボりじゃないの?
画像はイメージです(y.uemura / PIXTA)

仕事中に何度も「コーヒーブレイク」する女性、おじさんは「タバコ休憩」へ…サボりじゃないの?

東​​京都内のIT企業で働くミホコさん(40代)は、会社がオフィスの一角に設置したコーヒーマシンを“フル活用”しています。

「マシンは『福利厚生の一環』として社長の肝いりで導入されました。回数に制限はないですし、なんといってもタダなので1日に何回も飲みに行きますね」(ミホコさん)

マシンは自分のデスクから離れたところにあるため、コーヒーをいれて戻ってくるには5分程度の時間を要します。その間作業は止まることになりますが、ミホコさんは「コーヒーマシンの利用は会社公認だから」と業務時間中でも気にせず「コーヒー休憩」しているようです。

1回約5分の「コーヒー休憩」でも、1日4回行けば20分となります。この時間は仕事を勝手にサボったことにはならないのでしょうか。半田望弁護士に聞きました。

●「コーヒー休憩、タバコ休憩は原則『労働時間』」

——短時間のコーヒー休憩はサボったことになるのでしょうか。

勤務時間中に喫煙やトイレ、コーヒー等の飲み物を取りに行くために自席を離れるのは良くあることです。

法律上「休憩時間」となるのは、労働者が業務や使用者の指揮命令から完全に解放されている時間です。実際に業務を行っていない時間でも、上司からの指示や電話、来客など何かあればすぐに対応の必要性が生じる場合には休憩時間とはならず、「労働時間」となります。

裁判例でも、具体的な業務を行っていない「手待ち時間」につき、寿司店では来客があればすぐに対応する必要があるとして労働時間に当たるとした例(すし処「杉」事件、大阪地判昭和56年3月24日)や、一人勤務のガソリンスタンドにおける手待ち時間を休憩時間ではなく労働時間とした例(クアトロ(ガソリンスタンド)事件、東京地判平成17年11月11日)などがあります。

——タバコ休憩もしばしば槍玉に挙げられます。

タバコ休憩が労働時間に当たるかについては、労災の認定が争われた事件(北大阪労働基準監督署長(マルシェ)事件、大阪高判平成21年8月25日)で、喫煙中でも何かあれば対応する必要があったことを理由に労働時間に当たると判断されています。

逆に、労働時間ではないとした裁判例(泉レストラン事件、東京地判平成26年8月26日)もあります。喫煙場所が勤務店舗から離れていることや喫煙時間を考慮し、喫煙中は使用者の指揮命令が及ばないということを理由にしています。

タバコ休憩やトイレ休憩、コーヒー休憩は一般的に短時間で、喫煙場所やトイレ、休憩場所が就業場所との距離も離れていないことが通常です。そうだとすると、裁判例をふまえれば特別な事情のない限り指揮命令から解放されていないと考えるべきで、原則として労働時間に含まれると考えることが妥当です。

●「コーヒーが苦手な人も必要な休息を取れる職場環境づくりを」

——ミホコさんの場合はどうでしょうか。

今回のケースも、コーヒーマシンは同じオフィスのフロアにあるほか、コーヒーをいれる時間でも上司の指示や取引先等からの電話があればすぐに業務に戻る必要があるでしょうから、休憩時間ではなく労働時間に含まれると考えられます。

もっとも、コーヒー休憩やタバコ休憩が労働時間として扱われるとしてもあまりに頻繁に休憩を取ることで業務遂行に支障を来す場合には職務専念義務違反に当たるとして、処分を受けたり人事考課においてマイナスの評価を受ける可能性はあります。

とはいえ、職務専念義務違反になり得るのは、一日に数時間も休憩を取るような極端な場合に限られ、常識的な範囲内であれば問題ありません。一日に数回程度のコーヒー休憩であれば常識的に考えても職務専念義務には違反しないと考えてよいでしょう。

——コーヒーを飲まない人やタバコを吸わない人には、「そうはいっても休んでるじゃないか」との不満もありそうです。

確かに、コーヒー愛飲家や喫煙者がしばしば休憩を取ることに対して他の従業員が不公平感を感じることも否定できません。

しかし、適度な休息は作業効率を向上させる効果がありますので、不公平だからと言ってコーヒー休憩やタバコ休憩を認めないというのは行き過ぎですし、かえって作業効率を低下させる原因にもなりかねません。

コーヒーが苦手な人や非喫煙者も別の形で必要な休息を取ることができ、従業員がリラックスして仕事に臨める職場環境を作ることが業務効率の向上の観点からも必要ではないかと考えます。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

半田 望
半田 望(はんだ のぞむ)弁護士 半田法律事務所
佐賀県小城市出身。主に交通事故や労働問題などの民事事件を取り扱うほか、日本弁護士連合会・接見交通権確立実行委員会の委員をつとめ、刑事弁護・接見交通の問題に力を入れている。また、地元大学で民事訴訟法の講義を担当するなど、各種講義、講演活動も積極的におこなっている。

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