STAP細胞論文の不正問題をうけて、共著者の1人である若山照彦・山梨大学教授が6月16日、同大で記者会見を開いた。理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダーと同じ研究室で実験をしていたのに、彼女の「実験ノート」を見たことがなかったという若山教授は、その理由について、ハーバード大学出身の優秀な研究者という触れ込みだった小保方リーダーに「ノートを見せてくれとは言えなかった」と告白した。
STAP論文の筆頭著者である小保方リーダーは、2011年4月から13年2月にかけて、当時理研にあった若山教授の研究室に在籍していた。そのことから、会見では、若山教授が小保方リーダーにどのように接してきたのかが問われた。特に注目されたのが、小保方リーダーの「実験ノート」だ。
●「命の次に大事」な実験ノートをチェックせず
若山教授は、研究者にとって実験ノートは「命の次に大事なもの」と表現したが、小保方リーダーの実験ノートについては、見ていなかったことを明らかにした。その理由として、若山教授は、
「小保方さんは、早稲田大学出身で、ハーバード大学のバカンティ教授の右腕と言われるくらい優秀な研究者だという触れ込みで紹介された。研究室の大学生に指導するように、『実験ノートを見せなさい』とは言えませんでした」
と反省の言葉を述べた。
STAP論文の疑惑発覚後、初めて目にした実験ノートは「信じられないくらい、細かい情報がなかった」という。今後、理研の懲戒委員会が小保方リーダーに下す処分を受けて、自身も大学側に何らかの処分を申し出るという。
小保方リーダーとの接し方をめぐる主なやり取りは以下のとおり。
●「割烹着は見たことがない。エプロンを着て実験していた」
――実験ノートに一度も目を通したことがなかったのか?
通していない。ハーバードの優秀な研究者に、僕が「ノートを見せてくれ」という雰囲気ではなく、見せてもらったことは一度もない。
――若山教授の研究室の慣習は?
僕の研究室は、机を横に並べて、みんなで今日は成績が悪かったとか、この実験は発生率が悪いとか、話し合いをしながらやっている。毎日、ディスカッションをしているようなものだ。実験ノートを見るまでもなく、研究員が何をしているかを把握している。
――同じ部屋に小保方さんはいたのか?
小保方さんは客員研究員として来ていた。他の実験をしていた。実験室の中で、小保方さんと過ごすことはなかった。小保方さんだけは研究室にいなかったために、実験ノートを見る習慣がなかった。「見せろ」ということも言えず、見ないままになっていた。
——小保方さんは割烹着を来て実験をしていたのか?
割烹着は見たことがない。エプロンで実験をしていたことはあった。
――理研の笹井芳樹・副センター長は会見で、「若山さんが小保方さんの実験ノートをチェックしている手前、さらにノートを見せろということはできない」という発言をしているが・・・。
共著者たちは、あまり見ていないということは聞いている。どれくらい見たかということは聞いていない。
●「懲戒委員会の結果が出てから、大学に処分を申し出る」
――チェック体制の甘さについて、どう考えているか?
反省している。ただ、研究室の中で、毎週、それまでに出た成果を発表する会がある。(小保方さんは)必ず新しいデータが入っていて、発表の仕方もうまかった。発表を見る限り、研究が順調に進んでいることがわかるので、実験ノートを見なければいけないという状態にならなかった。
――責任を認識されているということだが、理研の懲戒委員会で小保方さん、笹井さんらの処分が近いうちに出る。若山さんはどう考えているか?
(論文撤回を呼びかけた)3月10日の時点で、山梨大学の学長に相談に行った。学長は、理研でおこなわれたことなので、山梨大では一切の処分はないと言った。懲戒委員会の結果が出てから、大学に処分を申し出るつもりだ。