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コロナ禍に「無料弁当2万食」提供、赤羽の「助け合い居酒屋」が惜しまれつつ閉店
めぐりやの橋本夫妻。左から保憲さん、弥寿子さん

コロナ禍に「無料弁当2万食」提供、赤羽の「助け合い居酒屋」が惜しまれつつ閉店

ホームレスの人や生活困窮者らに向けて、コロナ禍に無料弁当をつくり続けてきた東京都北区赤羽の飲食店「ソーシャルコミュニティめぐりや」が今年4月いっぱいで閉店した。オープン10年を区切りとした。

店長の橋本弥寿子さん(70)は、「やりきりました」と充実した表情。「全国からいただいた寄付や手紙も活動の支えになりました。本当にありがとうございました」。食料支援の活動自体は何らかの形で続けたいとしている。

●周囲からの寄付や手伝いも

めぐりやは2013年5月に夫婦で開業。日替わりカフェとして、ランチや居酒屋営業のほか、ギター教室や落語などのイベントも開いてきた。

食料支援としては、コロナ禍が始まった2020年の6月から月1回、おにぎりをつくって、近隣の公園付近で配布する活動をはじめた。

2021年1月に緊急事態宣言が出てからは、時短営業後に毎日50食程度の無料弁当をつくり、防寒具などと一緒に配布。活動を知った近隣住民の手伝いや寄付などもあり、同年9月まで店休日も休まず続け、計約1万3000食を提供した。

活動はその後も規模等を変えながら断続的に続き、最終的におにぎり活動も含めて、約2万食をつくった。

画像タイトル 弁当づくりの様子(2021年撮影)

●早朝にもらった感謝の言葉

こうした活動も評価され、弥寿子さんは今年4月、市民団体の求めもあって、政治未経験ながら東京都北区長選挙に立候補。落選したものの、「やさしさめぐるまちづくり」を訴えた。

急遽出馬が決まったため、閉店に向けてのイベントはできなかったが、心残りはないという。

「去年の9周年のときに、お世話になっている芸人さんやミュージシャンを呼んで、1週間毎日イベントをやって盛り上がりましたから」(弥寿子さん)

そのときは忙しく、近隣のホテルに泊まる日も。早朝の赤羽で段ボールを片付けるホームレスの人に「お弁当を配っているので良かったら持っていってくださいね」と声をかけたところ、「知っています。助かっています」と感謝の言葉をもらったことが印象に残っているという。

●近隣の高齢者「これからどこに行けばよかんべ」

4月28日、居酒屋営業の最終日は店に入りきれないほどの常連客が集まり、27時ごろまで営業が続いたという。

にもかかわらず、翌日の29日には月1のおにぎり配りのため厨房に。店内には近隣住民のほか、元ホームレスの人や障害のある人ら、5人のボランティアも駆けつけ、約40食をつくった。

画像タイトル おにぎりのほか、肉や野菜など栄養バランスを考えたおかずも。

ボランティアの中には、店の常連から「ばあちゃん」と呼ばれる90代女性の姿もあった。ばあちゃんが「これからどこに行けばよかんべ」とつぶやくと、「やめるのをやめたくなっちゃいますね」と弥寿子さんが笑う。

1週間後の5月6日には、ほぼ同じメンバーで店舗に集まり、豚汁をつくって配った。住民たちの憩いの場になっていた店舗も今月中には片付けて、引き渡すことになる。

「今も片付けでシャッターを開けると、『今日はありますか』とたずねてくる人がいるんです」(弥寿子さん)

公助の少なさに疑問は感じつつ、これまで通りのペースとはいかないまでも、引き続き「助け合い」の活動ができないか、方法を考えているという。

画像タイトル 5月6日には豚汁を提供

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