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昭和かよ…PTAにモヤる4月 母親代表というナゾ役職、ひとり親に「勝手に離婚したんやろ」
写真はイメージ(yukiotoko / PIXTA)

昭和かよ…PTAにモヤる4月 母親代表というナゾ役職、ひとり親に「勝手に離婚したんやろ」

「行事に参加できないと連絡すると『仕事って、都合のいい言い訳ですね』と返されました。ひとり親に『勝手に離婚したんやろ。わがままや』と陰で言う人もいました」

弁護士ドットコムニュースがLINEでPTAに関する体験談を募集すると、PTAと子ども会の役員を経験した自営業の女性から、このような声が寄せられた。

地域差はあるものの、役員に選ばれやすいのは、自営業や公務員。慣習や内部規定で性別が決められている役職もあるという。

役職決めをめぐり保護者同士に軋轢(あつれき)が生じる背景には、昭和感満載の変われないPTAの姿があった。

●「仕事って、都合のいい言い訳ですね」

北陸地方在住で自営業をしている鈴木さん(仮名・40代女性)は、第2子が小学6年生のころにPTAと地区の子ども会の役員に選ばれた。コロナ禍になる前の2019年のことだ。

いずれの役員も小6の保護者から選ばれる。PTAは前任者の指名で決まり、地区の子ども会は順番にまわってくる。

たまたま、その年に2つの役員が重なった。役員は公務員や自営業が選ばれることが多く、指名されて断る人はいなかったという。診療所で働く医師が会長に選ばれたこともある。

鈴木さんを特に悩ませたのは、子ども会の活動だった。子どもたちが祭りや行事に参加できなくなるため、「入会しない保護者はいない」と語る。入学とともにLINEグループへの招待がきて、承認とともに「入会」したとみなされるという。

経営している店の定休日は月曜日と第3日曜日。卓球やかるた大会など、ほとんどの行事に参加できたものの、どうしても行けない行事があった。地区の一大イベントで、朝9時から夜21時までの長時間拘束を余儀なくされる祭りだ。

画像タイトル 複数の行事がある中でも、祭りは子ども会の一大イベントだという(mits / PIXTA)

約50人が参加するグループLINEに「仕事の都合で参加が難しい」と連絡すると「仕事って、都合のいい言い訳ですね」と返されたという。

「この発言をしたのは、土日休みの仕事をしている女性でした。卒業後も地域内で会う機会はありましたが、挨拶をしても無視されています」(鈴木さん)

●会長は「男性」副会長は「女性」 ひとり親に厳しい視線

一方、PTA活動は「仕事と言えば融通がきくため、楽ではあった」。役員は会長・副会長・会計の3役のみ。役職につかずに小学校生活を乗り切る保護者もいる。鈴木さんにも3人の子どもがいるが、役員を経験したのは一度きりだ。

慣例で、PTAと子ども会の会長は男性、PTAの副会長と会計は女性と決められていたが、子ども会はどちらでもよいとされていた。ところが、性別を決めていることから、ひとり親家庭に「ずるい」という声があがることもあった。母子家庭の場合はPTA会長をする必要がないためだ。

「いろいろな事情がある人もいるとは思うのですが、『勝手に離婚したんやろ。わがままや』と陰で言う人もいました」(鈴木さん)

養育費がもらえず、仕事と育児に追われている父子家庭の人もいた。しかし、「ひとり親は理由にならん」と子ども会の会長にさせられてしまったという。「『みんな忙しい』ことを理由に、個々の事情は聞いてもらえない風潮があった」と鈴木さんは振り返る。

●父親代表はないのに「母親代表」はあり

LINEでは、性別の規定を撤廃したという役員経験者からも体験談が寄せられた。改革に踏み切ったのは、3人の子どもの父親で、中部地方で自営業をしている藤田さん(仮名・40代男性)。コロナ禍の2022年、地域の人に小学校のPTA役員を依頼され、引き受けた。

役員に選ばれるのは、公務員や自営業がほとんどで、在宅勤務の会社員もいる。「任期は2年。融通がきく人が声をかけられやすい」。月に1回の集まりは、休みである平日に開催されるため、支障なく活動を続けているという。

性別によって役割が違うことは、役員になってから初めて知った。規約に性別のことは書かれていないものの、会長と副会長は男性という慣例がある。「父親代表」はない一方で、女性にしかできない「母親代表」という役職があった。

画像タイトル 「父親代表」はないにもかかわらず、「母親代表」という役職があったという(タカス / PIXTA)

疑問を感じた藤田さんは、名称を変え、性別を問わずに誰でもできるようにしようと提案した。賛成する声があがったが、学校側が提案したのは「家庭教育委員」だった。

「外国にルーツを持つ人、ひとり親など、多様な家族の子どもたちがいますし、教育は家庭だけではなく、地域社会でおこなうことが推奨されています。『家庭』ということばを使うことに違和感を抱きましたし、『家庭』が『教育』をおこなうという前時代的な思想を彷彿させるとも思いました」(藤田さん)

藤田さんは反対したが、学校側に「行政の方針」といわれ、名称が決まった。男女の枠組みをなくすことには成功したものの、まだまだ改善すべきことはあると語る。

多様な家族と働き方がある令和の時代に、PTAのあり方は昭和のままのようにみえる。それでも藤田さんのように、小さくても一石を投じれば、変わる可能性はあるのかもしれない。

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