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元上智大教授・林道郎氏のセクハラ訴訟判決「不適切な関係だが、違法行為は認められない」東京地裁
東京地裁(2022年7月、弁護士ドットコムニュース撮影)

元上智大教授・林道郎氏のセクハラ訴訟判決「不適切な関係だが、違法行為は認められない」東京地裁

元上智大学教授で、美術評論家の林道郎(はやし・みちお)氏から、10年にわたりセクハラを受けていたとして、元学生の女性が林氏を相手取り、慰謝料など約2457万円を求めていた訴訟で、東京地裁(伊藤康博裁判官)は3月27日、約128万円の支払いを命じる判決を下した。

判決によると、この128万円は女性が林氏の妻から求められて支払った慰謝料の5割に当たるもので、林氏が妻に対して負う賠償とした。それ以外の原告の請求は棄却した。原告側が主張していた林氏による「グルーミング」(教師が教え子などに対し、性的な行為を目的に手なづけること)なども認められなかった。

女性は判決を不服として、控訴を検討している。

●「適切な関係ではないが、不法行為ではない」

判決によると、林氏は女性が大学院に進学したのち、女性に性的行為を働きかけた。関係は10年にわたり続けられ、女性から関係を打ち切った後、女性はうつ病と診断された。

上智大は2022年2月、林氏が女性と不適切な関係にあったことを認め、「教育者の姿から逸脱した行為」だとして、林氏を懲戒解雇している。

判決は、「林氏が大学の教授または大学院の指導官であり、原告は林氏の指導に従う立場だった」などの事情を認めつつ、次のように述べている。

「原告と林氏との関係は未婚の男女が交際するような関係と同様に解することはできない。その意味では適切な関係ではなく、林氏自身も、卒業後に付き合ったことにしておいてくれなどと述べていることからも裏付けられ、実際、被告の勤務先からは大学在学中に性的関係を持ったこと、ラブホテルで論文指導したことを理由に懲戒解雇されているのは相当」

一方で、「民法上直ちに不法行為となると解することはできず、両者の関係、年齢、婚姻の有無、行為に至った経過などを総合的に勘案して、被害者の自由意志を奪うような状況で性的関係を持ったと認められる場合には、性的自由を侵害したとして不法行為が成立すると解するべきである」としたうえで、「長期間にわたり原告の意志に反して性的関係を継続したとは認められない」と結論づけた。

●原告女性「被害を訴えることができなくなる」

この日、法廷で判決を聞いた女性は「悔しいです」と涙をにじませ、次のように語った。

「成人に対するグルーミングを認めてもらうのが難しいと感じました。でも、(この判決では)被害者が被害を訴えることが怖くなるし、被害を訴えても無駄だと思ってしまう。被害はなくならないと思いました。それはおかしいと思うので、戦えるだけ戦いたいです」

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