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学校のいじめ、警察に通報する意味とは? 弁護士に聞いてみた
ペイレスイメージズ1(モデル) / PIXTA

学校のいじめ、警察に通報する意味とは? 弁護士に聞いてみた

文部科学省は2月7日、全国の教育委員会に対し、犯罪行為にあたるいじめはただちに警察に相談・通報をするよう求める通知を出しました。

通達では、警察に相談・通報すべきいじめの事例として、該当する可能性のある罪名とともに19の事例を示しています。

たとえば、「度胸試しやゲームと称して、無理やり危険な行為などをさせる」は強要罪、「裸が写った写真・動画をインターネット上で拡散すると脅す」は脅迫罪などにあたる可能性があります。

いじめ問題にくわしい高島惇弁護士は「世間の厳罰化の意向に応えるという意味ではいいことだと思いますが、比較的軽微な犯罪にも警察が関わることで、かえって児童生徒の教育が難しくなってしまう可能性もある」としてバランスが重要だと話しています。詳しく話を聞きました。

●「いじめが警察沙汰になるのを嫌がる学校・教育関係者は多い」

——いじめ問題を取り扱う中で、警察に相談する事例はどのくらいあるのでしょうか。

警察に相談することは比較的ありますが、いじめの種類によります。暴行罪や器物損壊罪にあたるいじめが起きた場合、保護者の意向で警察に被害届を出したり相談したりすることはありますが、警察は「学校内部でのトラブル」として介入しようとしないのが実情です。

それに対し、性犯罪や掲示板に匿名で悪口などを書かれるインターネット上の名誉毀損にあたる事案については、迅速に動いて事件化されることが私の経験上は多いので、依頼者の意向次第ではあるもののよく連絡しています。

例えば、インターネット上の名誉毀損について、被害生徒が直接対処しようとすると、発信者情報開示の手続きをとらなければいけません。警察が令状を取得してプロバイダーに対応してくれることによって、被害生徒も法的手続きをとることなく、発信者を特定できます。被害者の権利救済の観点からも、非常に望ましいことだと思います。

——これまでいじめについて、学校と警察で連携はされていなかったのでしょうか。

いじめが警察沙汰になるのを嫌がる学校・教育関係者も多く、学校は警察との連携については消極的でした。私立と公立ではまた事情が異なりますが、今後少なくとも公立学校は今回の通知を受けてだいぶ意識を変えると思います。

ただ、警察が全ての事案に積極的になるかどうかは未知数だと思います。

——学校が動いてくれない場合、保護者から直接警察に相談しても良いですか?

全く問題ありません。

保護者から連絡を取って、それが契機となり、警察が積極的に学校を調査することはよくあることです。

いじめ事件とは異なりますが、教職員による生徒・児童へのわいせつ行為も、学校が大ごとにしたくない時に、保護者から警察に相談することで、警察が積極的に学校に立ち入って調査することもあります。

——今回は警察との連携ということで刑事手続きの話が主ですが、他にいじめを解決する方法はありますか。

大きく分けて刑事、民事、学校での対応という話になります。被害を受けた場合には、民事で損害賠償請求をすることになります。

ただ、警察が関わったからといって、学校の教育環境がすぐに改善されるという話ではありません。

学校での対応として、高校または私立の小中学校であれば加害児童・生徒を退学処分して学校環境の改善を図ったり、仮に退学処分を講じない場合でも、卒業までの別室指導や被害者と加害者が接触しないような動線の設置など、被害生徒に接触しないような形で調整を図ったりする方法があります。

今後、警察がどう動くか。これにより、いじめの件数に影響があるか。当面は動向を注視したいと思います。

プロフィール

高島 惇
高島 惇(たかしま あつし)弁護士 法律事務所アルシエン
学校案件や児童相談所案件といった、子どもの権利を巡る紛争について全国的に対応しており、メディアや講演などを通じて学校などが抱えている問題点を周知する活動も行っている。近著として、「いじめ事件の弁護士実務―弁護活動で外せないポイントと留意点」(第一法規)。

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