駐輪場に停めていた自転車が倒れてバイクに傷をつけたと言われ、弁償を求められているーー。そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられている。
相談者は、自宅マンションの駐輪場に自転車を停めていた。駐輪場は空いているスペースに住人が好きなところに停めるタイプの駐車場だという。
ある日、自転車に乗ろうとしたら、「連絡ください」という張り紙があった。書かれた連絡先に問い合わせたところ、隣に停めてある大型バイクの持ち主から、相談者の自転車が倒れたため、バイクにキズがついたと言われ、修理代30万円を請求されたという。
相談者としては、普段どおりに駐輪していたことに加え、キズがついた経緯がわからないこともあり、どこまで責任を負うものなのかわからずにいるようだ。
駐輪場に自転車を停めていて他の車両をキズつけてしまった場合、経緯がわからなくても弁償しなければならないのだろうか。新保英毅弁護士に聞いた。
●傷の原因、立証する必要があるのは「原告」
ーー相談者は修理代を負担しなければならないのでしょうか。
相談者が修理代の負担をしなければならないのは、相談者の行為が不法行為と評価される場合です。つまり相談者の駐輪に過失があり、これが原因で相手方のバイクが損傷したといえる場合です。
ーー相談者は傷をつけた覚えがないようです。
所定の駐輪場に通常の方法で駐輪したのであれば、過失があると評価される可能性は低いでしょう。
民事裁判では、相談者の駐輪に過失があったこと、相談者の過失が原因で相手方のバイクが損傷したことは、修理代金を請求する原告(今回は大型バイクの持ち主)が立証する必要があります。
したがって、今回のバイク損傷の原因がはっきりしなければ、修理代の請求は認められません。
●「相手が請求する全額の負担になるわけではない」
ーーもし相談者の駐輪が不法行為と評価され、バイクの修理代を負担しなければならなくなった場合、全額負担になるのでしょうか。
その場合でも、必ずしも相手方が請求する全額の負担になるわけではありません。相手方が主張する修理内容や金額が過剰であれば、修理として必要かつ相当な限度に限られます。
また、駐輪場で自転車が倒れることは珍しくありません。たとえば、不安定な自転車が駐輪されている近くにあえてバイクを駐輪したような場合、相手方の落ち度として考慮され、相談者が負担すべき金額から減額されることはあります。
ーー集合住宅の駐輪場でのトラブルは珍しくないようです。トラブルを未然に防ぐためには、どのような対応が考えられますか。
まず、今回のような事故を防止するためには、自転車とバイクの駐車スペースを分けてもらった方がいいでしょう。
また、事故が発生した場合にその発生状況や原因を明らかにできるようにするために、駐輪場に防犯カメラを設置してもらうことが有益だと思います。