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「髪を染めた子どもの写真」親がSNSで全体公開、拡散してトラブルに
写真はイメージです(Topicimages / PIXTA)

「髪を染めた子どもの写真」親がSNSで全体公開、拡散してトラブルに

SNSに子どもの写真を掲載している親たち。公開範囲を限定している人がいる一方で、全体に公開している人もいる。しかし、その全体公開が思わぬトラブルを招くことがある。

弁護士ドットコムにも、SNSで公開されていた子どもの写真をめぐり、トラブルに発展してしまったという相談が寄せられている。その内容は、次のようなものであった。

●全体公開された写真を拡散した相談者

ある母親が、小学校低学年の息子(ヒロキくん・仮名)の写真をSNSに投稿していた。写真は全体に公開されて、誰でも閲覧できる状態だったという。

ヒロキくんは髪を染めており、そのことに衝撃を受けた人も少なくなかったようだ。そのうち数人は、「この先受験とか大丈夫か」「この母親とは接点をもちたくない」という感想とともに、ヒロキくんの写真をSNS上に無断投稿した。

相談者も、これらに便乗して、特にコメントはつけずに写真をシェアしてしまったようだ。

写真の拡散を知った母親は、「息子の写真を晒して侮辱した。警察に行く」と憤慨。母親は、ヒロキくんの許可を得て、写真を撮影し、SNSに投稿したとも主張している。

一方、相談者は「拡散したのは事実ですが、もともとSNSで全体に公開されていた写真です」と納得いかない様子だ。はたして相談者は、損害賠償責任を負う可能性はあるのだろうか。櫻町直樹弁護士に聞いた。

●「肖像権」を侵害したとして(民事上の)損害賠償責任を負う可能性も

ーー相談者は損害賠償責任を負う可能性はあるのだろうか

「知人女性の子ども(ヒロキくん)の『肖像権』(具体的には『勝手に写真を撮られたり、それを公表されたりしない権利』のこと)を侵害するものとして、(民事上の)損害賠償責任を負う可能性はあります。たとえば、以下の裁判例があります」

<最高裁判所平成17年11月10日判決(民集59巻9号2428頁)> 「写真週刊誌のカメラマンが法廷にカメラを持ち込み、刑事事件の手続における被告人の動静を報道する目的で、裁判所の許可を得ることなく、かつ、被告人に無断で、傍聴席から被告人の容貌を写真撮影し、週刊誌に掲載して公表した行為」が、被告人に対する不法行為にあたるかが争われた裁判。

「最高裁判所は『人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する』、『人は、自己の容ぼう等を撮影された写真をみだりに公表されない人格的利益も有すると解するのが相当』としています。

また、今回のケースは知人女性がヒロキくんの許可を得ているようですが、親(法定代理人)であるからといって、子ども(ヒロキくん)の権利(肖像権)を侵害する行為が正当化されるわけではないことにも注意が必要です。

海外の事例ではありますが、『18歳の女性は、両親が500枚以上ものスナップ写真を彼女の同意なしにソーシャルメディアで友人たちにシェアしたことで、彼女の人生は生き地獄になったと怒り心頭だ。娘の再三の懇願にもかかわらず、彼女の両親は写真を削除することを拒否している』ということで、女性が両親を提訴したという事例が報道されています(AOLニュース2016年9月16日)」

ーー今回のケースは、もともと知人女性が自分でSNSに投稿していた写真を拡散したというものだ。その場合でも肖像権の侵害にあたるのだろうか

「通常、写真を公開するにあたっては、本人が公開の態様・媒体・タイミング等について考えたうえで行っているはずですし、そのような本人の意思は尊重されるべきでしょう。

そのように考えると、いったん特定のSNSで公開したからといって、それを他人が勝手に拡散することまで承諾しているとまでは言えない、と考えるべきだと思われます。

実際に、以下の裁判例があります」

<東京地方裁判所平成15年4月24日判決> 「人が私生活上の一場面での撮影及び公表を承諾したからといって、これに係る肖像権を放棄し、いかなる公表のされ方をしようともすべて承諾したことにならないことはいうまでもない。そして、人が自らの写真を雑誌等に掲載することを承諾するか否かを判断する上で、その目的、態様、時期等を含む公表の具体的諸条件は、重要な要素であり、これと著しく異なる用い方をされた場合には、承諾の範囲を超え、改めて被撮影者の承諾を得ることを要する場合もあると考えられる」

「この裁判例にしたがえば、知人女性の子どもの写真を勝手にSNSに投稿したという行為は知人女性のお子さん(ヒロキくん)の『肖像権』を侵害するものとして、(民事上の)損害賠償責任を負う可能性がある、ということになるでしょう。

なお、子どもの様子を撮影した『スナップ写真』が『写真の著作物(著作権法2条4項)』にあたると判断される場合には、撮影者に無断でSNS上に投稿することは著作権者(=撮影者である知人女性)の著作権(複製権(同法21条)、公衆送信権(同法23条1項))を侵害するものとして、民事上・刑事上の責任を負うことがありますので、この点にも注意が必要です」

●子どもの写真を投稿する側が気をつけるべきことは?

ーーネット上では、親が子どもの写真をSNSに載せることに反対する声も少なくない。「犯罪に巻き込まれる可能性を考えるべき」、「子どもの写真がどう使われるか分からない」、「危険に晒されてしまう」などの指摘が上がっている。SNSに子どもの写真を投稿する側(親)はどのようなことに気をつけるべきだろうか

「幼い頃は、子どもは親に写真を撮ってもらうことを喜ぶかもしれません。しかし、子どもであっても『肖像権』を有しています。

上で述べたように、親(法定代理人)という立場にあるからといって、子どもの権利を侵害する行為が正当化されるわけではありません。そのため、(特に子どもが『他人からどう見られているか』などを気にする年頃に差しかかったときには)写真を撮影すること、それをSNS上で公開することについての承諾を得ておくべきといえるでしょう。

ただし、子どもが撮影に応じていれば、通常は撮影について(黙示の)承諾があるといえます。SNSへの投稿は、撮影とはまた別の行為ですから、子どもに『投稿していい?』と確認すると良いでしょう。いったん投稿した写真について『消してほしい』と言われたときには、すみやかに削除すべきです。

また、SNSは誰が見るか分かりません。そのため、もし投稿する場合は、子どもが特定されないように、目元や特徴のある部分にマスキングを施すなどの処理をした方がよいでしょう。

氏名や住所、電話番号などの個人が特定され得る情報はもちろんのこと、通っている学校の名前やよく行く公園の名前など、居住地の特定につながる情報と一緒に写真を載せてしまうと、誘拐やストーキングなどにつながるリスクがあるので、避けましょう。

さらに、スマートフォンで撮影した写真に位置情報が記録されている場合には、撮影場所が特定される可能性があります。位置情報を削除するツールなどを使い、削除しておいた方が良いでしょう」

プロフィール

櫻町 直樹
櫻町 直樹(さくらまち なおき)弁護士 パロス法律事務所
石川県金沢市出身。企業法務から一般民事事件まで幅広い分野・領域の事件を手がける。力を入れている分野は、ネット上の紛争解決(誹謗中傷、プライバシーを侵害する記事の削除、投稿者の特定)。

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