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カーナビの「テレビ視聴制限」機能を無効にしたら違法? 「ながら運転」の法律問題
写真はイメージです(msv / PIXTA)

カーナビの「テレビ視聴制限」機能を無効にしたら違法? 「ながら運転」の法律問題

車の運転中にスマートフォンの操作をしたり、カーナビで映像視聴をしたりすることは、なんとなく危険だというイメージはあるでしょう。

では、運転中の映像視聴制限機能を無効にして、自由に映像視聴できるようにすることは、違法行為なのでしょうか。また、スマホホルダーを車に設置することもダメなのでしょうか。

このような「ながら運転」の法律問題について、自動車ライターの松平智敬さんのレポートをお届けします。

●「ながら運転」の場合、死亡事故率が高くなる

公益財団法人・交通事故総合分析センターの資料によると、2019年に発生した交通事故総件数は38万1237件、死亡者数は3215名だった。前年に比してそれぞれ-11.5%・-9.0%だ。ところが、2018年のながら運転による事故は2790件、死亡者数は42名に達しており、事故件数こそ前年を下回っていたものの、死亡者数は増加傾向が続いている。

しかも、死亡事故率(事故件数に対する死亡者数の比率)は、ながら運転をしていない場合が0.73%であるのに対して、ながら運転をしていると1.51%という高い数値になっている。このデータは、ながら運転がいかに危険であるかということを、如実に表しているといえる。

そもそも、ながら運転はスマホ・カーナビ・テレビのみが対象になっているわけではない。新聞・雑誌・書類といったものや、飲食・喫煙・化粧・会話なども含まれている。要するに、何かに気を取られてわき見運転している状態を指している。

ただ、2016年に愛知県で発生した交通死亡事故で、運転者がスマホゲームをしていたことが今回の道路交通法改正につながっていることもあり、とくにスマホ・カーナビ・テレビといった無線通話装置・画像表示装置が、違反すれば厳罰の対象になった。

●ながら運転、厳罰化で反則金が3倍に

昨年12月から実施された、ながら運転の厳罰化が、どれくらい厳しいものになったのかというと、たとえば普通乗用車を運転中にスマホで通話するといった違反行為(保持)を行うと、これまで6000円だった反則金が、3倍の1万8000円になるといった具合だ。

さらに、そういった行為で事故を起こすなど(交通の危険)をすれば、交通反則通告制度の対象にはならなくなり、罰則として1年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる。交通違反の点数制度も同様で、それぞれ1点から3点、2点から6点に引き上げられた。

ここで1つ留意しておきたいのは、遵守事項と罰則対象に若干のズレがあるということだ。道路交通法では運転者の遵守事項として、ながら運転の禁止が明記されている。具体的には、スマホなどでの通話やスマホ・カーナビ・テレビなどの画面を注視しながら、運転をしてはいけないということだ。

しかし、「保持」に関する違反行為(事故を起こしたり、事故につながったりするような危険な状況にならなかったときの違反行為)は、スマホホルダーに置かれているスマホや、クルマに据え付けられたカーナビ・テレビの操作をしても、罰則の対象にはなっていない。

もちろん、このことがスマホなどを手に持っていなければ操作や注視をしてもよいという免罪符だということではない。「保持」をしていなかったとしても、スマホ・カーナビ・テレビを操作・注視することは交通事故につながるので、絶対にやってはならないことだ。

●画面の「2秒注視」が検挙の基準って本当か、警察に聞いてみた

運転中のスマホ・カーナビ・テレビの注視はいけないことだが、どれくらい見ると注視になるのか。それは「2秒以上ではないか」とうわさされている。根拠は警察庁や政府広報オンラインといったホームページに、運転中2秒注視したときの危険性が掲載されていることにある。

しかし、その判断は正しくない。神奈川県警・交通相談センターによると「法律(道路交通法)に何秒という規定はありません。画面を見ることで交通安全に支障があってはいけないということです」とのことであった。

また、「今回の法改正(道路交通法)は罰則について行われたのであって、ながら運転がいけないということは以前から同じなのです」(同)だそうだから、これまで通り検挙は現場警察官が状況を見た上で判断するということだと思われる。

だとすれば、先に触れた「保持」のない注視が罰則対象から外れているのも腑に落ちる。注視だけなら、クルマの外から確認して検挙するのは至難の業だ。しかし、事故が起きるなどといったことがあれば、警察は当事者を取り調べて、スマホなどを注視したといった供述が取れ、違反したことをはっきりさせられるので、罰則を確定・執行しやすいということだろう。

●視聴制限を無効にしたからといって、車検に通らないわけではない

何度も述べたように、ながら運転は危険なので絶対にやってはいけない。では、それにつながるかもしれないような、走行中にカーナビ・テレビを見られるようにする装置は、違法にならないのだろうか。

カーメーカーやディーラーからクルマを購入する際に装着されるカーナビ・テレビは、走行中の操作や視聴が制限されている。あとから装着するタイプのものでも、そういった機能は多くの機種に備わっている。しかし、それを無効にするテレビ・ナビキットなどといった装置をつければ、走行中でも視聴・操作が可能になる。

カー用品店の元店員によると「そういった商品・作業を希望されるお客様は多いですね。しかし、お店ではあくまで助手席の方の便宜を図るものだとご説明しています」なのだそうだ。こういった装置はクルマにつけるものなので、道路運送車両法にかかわる問題である。

そこで、国土交通省・自動車局に問い合わせると「そういった装置をつけることで、車検に通らないということはありません」という回答をもらった。すなわち、違法ではないということだ。スマホを固定しておくスマホホルダーも同様だが、つける場所(運転視界を遮るなど)によっては車検に通らないことがある。

●交通事故死亡者が増えると、規制対象になる可能性も

2016年に、ナンバープレートカバーが全面的に装着禁止になった(道路運送車両法)。販売者が、同法違反幇助に問われて検挙されている。この商品は、もともとナンバープレート保護を目的に開発されたものだが、色を入れたり赤外線を通さなくするなど、ナンバープレートの視認性を悪化させてしまった。これは、明らかに何か生じたときの検挙逃れ的な行為である。

さらに、オービス(自動速度取締装置)や、Nシステム(自動車ナンバー自動読み取り装置)・防犯カメラなどといった防犯システムにも支障をきたす。同様に、テレビ・ナビキットやスマホホルダーを利用することよって交通事故死亡者が増えれば、これらの商品も規制対象になることが考えられる。自身の安全のためにもながら運転につながるようなことは、厳に慎むべきだ。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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