法務省では10年前から、日本の法令の外国語翻訳に着手、現在700を超える英訳を専用のホームページで無償公開している。しかし、翻訳に時間がかかることなどが課題となっていた。国際的な取引が重視される中、日本が「司法外交」を展開する上で法令の外国語翻訳の推進が必要とのことから、法務省は1月15日、有識者を集めた「日本法令の国際発信に向けた将来ビジョン会議」を設置。今後、ITやAIを活用した翻訳や、海外に向けた情報発信のあり方などを話し合うという。
これを受けて、日本弁護士連合会は1月23日、法務大臣と会議座長に対し意見書を提出した。意見書では、法令英訳のスピードや質の向上、裁判例の外国語翻訳、中国語訳の導入などを求めている。同日に会見した日弁連の「国際活動に関する協議会」國谷史朗副議長は、「これまで法令翻訳は10年間の成果はあるものの、質・量ともにまだまだ不十分と思っています。さらなる体制の整備を日弁連としても求めていきたい」と話した。
●求められる法令の中国語訳
意見書では、まず、「現在の日本法令外国語訳推進体制の改善について」として、企業や個人の活動がグローバル化している現在、法令外国語訳のスピードと質の向上の必要性を訴え、人材育成、AIの活用などを求めている。
次に「法情報のコンテンツの充実について」として、法令のみならず、主要な裁判例の翻訳や外国語訳、また、英語だけでなく中国語訳の導入を求めている。
その背景として、國谷副議長は「中国の方が観光客も含めて日本で激増しています。中国人による投資やM&Aも盛んになっています。そうした中国の方は英語に堪能ではありますが、中国当局とのやりとりの中で、中国語の文章が必要になります。そこで、日本の法令の中国語訳があれば、格段に進みます。また、すでに日本に住んでいる方が交通事故などのトラブルにあった際、その処理を全国の弁護士の方は相当、担当されていると思います。そうした時、ネットで中国語訳の法令が出てくるととても便利です」と説明した。