同性婚を求める憲法訴訟は、2月14日に13組の同性カップルが全国4裁判所で一斉提訴する。現在、原告になる予定のカップルたちが、不受理となったことを裁判の証拠にするため、各地で婚姻届を提出している。
ただ、受理されないことは分かっていても、少なからずショックはあるようだ。1月21日、「結婚の自由をすべての人に」訴訟弁護団が主催するイベントには、婚姻届を出し終えた2組の同性カップルが登壇。「重い気持ちになった」などと感想を語った。
そんな気持ちを察してか、不受理となることは伝えつつ、異性カップルと同じように「結婚記念カード」を発行して、喜ばれた自治体もあるようだ。
●ドイツで同性婚しているのに…
まずはイベントのレポートから。中島愛さんとクリスティナ・バウマンさんは2018年、ドイツで結婚した。しかし、今年1月、日本で婚姻届を出したところ、不受理となってしまった。
「私たちは同性婚したからドイツでは一緒に住める。でも、日本では(バウマンさんに)配偶者ビザが出ない」(中島さん)
同性婚している外国人同士なら、配偶者にも「特定活動」の在留資格が下りうる。しかし、一方が日本人だと適用されないという非対称性がある。
現在、2人が一緒に生活できるのは、バウマンさんが留学ビザを取得し、専門学校に通っているからだ。
しかし、同性婚の仕組みがないということは、「就職活動で仕事が見つからないと、最悪ドイツに帰らないといけない」(バウマンさん)ことを意味し、不安は尽きない。
中島さんは「私たちだけでなく、困っている日本人と外国人の同性カップルはたくさんいる」と話す。
●祝福がない婚姻届
中島さんとバウマンさんが出会ったドイツでは、2001年に「生活パートナーシップ法」ができ、2017年には同性カップルも結婚できるようになった。
2人によると、ドイツではパートナーシップ法があったこともあり、同性カップルの結婚は当たり前になっているという。2人が婚姻届を出したときも、役所の人だけでなく、周りの一般人も祝福してくれたそうだ。
一方、日本で婚姻届を提出したとき、係員は丁寧に対応してくれたものの、祝福の言葉はなかったという。
この点は、今年1月4日に婚姻届を提出した古積健さん(44)と相場謙治さん(40)カップルのときも同じだったようだ。
●役所によっては「結婚記念カード」の発行も
もちろん、役所が難しい立場に置かれていることも理解できる。提出について事前に連絡があるとはいえ、報道陣が入る以上、事務的な対応になるのは仕方がないことだろう。
ただ、婚姻届を提出した原告の中には、こんな体験をしたカップルもいるので紹介したい。
あるゲイカップルは今年1月4日、婚姻届を提出した際、係員から「提出された証として、結婚記念カードを発行できますが、どうなさいますか」と聞かれた。
カードには「ご結婚おめでとうございます」の印字と当日の日付スタンプが押してあったという。
本人のブログには、「(係員の目には)婚姻届は不受理になりますが、私はあなた方を祝福しています。精一杯の気持ちですと書いてあったように感じた。ウルッとした」と記されている。
弁護団によると、今後も同性カップルによる婚姻届の提出が続く予定。しかし、現行制度ではすべて不受理になる見通しだ。
この日登壇した2組のカップルは、不受理となることについて、「結果はわかっていたけど、重い気持ちになった」などと述べ、少し表情を曇らせた。
前述のブログは、「現場サイドでは、同性の婚姻について様々な意見があるのかもしれない」とした上で、次のように続く。
「社会で認められることって、大切だな。結婚記念カードだけでもこんなに幸せになれるのだから、国から本当に婚姻を認められたら、きっと号泣してしまうに違いない」
「裁判のため」とはいえ、婚姻届の提出は人生の一大イベント。制度上、受理はできないだろうし、直接祝意を伝えることも難しいのだろうが、粋な対応をする自治体が1つでも多く出てくることに期待したい。
なお、この訴訟についてはホームページ(http://marriageforall.jp/)もできた。「パートナーシップ制度で十分ではないのか?」「同性婚は憲法違反ではないのか?」などの疑問についても回答している。