11月から「介護」が加わり、受け入れが拡大する外国人技能実習制度。その問題点について考える日弁連主催のシンポジウムが10月30日、弁護士会館で開かれた。
シンポでは日本同様、「実習生」への人権侵害が横行していた韓国で、労働環境が改善されていった事例が紹介された。特徴的なのは、建前を捨てて、外国人労働者の受け入れ制度として見直しを行った点だ。
●日本では監督を強化するが、弁護士「構造問題はそのまま」
日本の実習生制度は、発展途上国への技術移転を目的にスタートした。しかし、安価な労働力の供給源として活用されることも多く、実習生への人権侵害の報告が絶えない。
たとえば、ものづくり産業労働組合(JAM)には、実習生から「聞いていた労働条件と違う」「残業代が時給300円しかない」といった劣悪な労働環境についての相談が多く寄せられているという。
こうした問題を受け、今年11月からは「外国人技能実習機構」を通し、受け入れ先企業の「実習計画」をチェックするなどの監督が強化される。
しかし、日弁連の外国人労働者受け入れ問題PTの高井信也弁護士は、「構造問題はそのままだ」と指摘する。ビザの関係で自由に転職できず、企業の言いなりにならざるを得ないことや、送り出し機関や管理団体の中間搾取に対する、抜本的な解決にはならないと考えるからだ。
●韓国ではブローカーを排除する仕組み
日弁連はかねてから、人権侵害の頻発を理由に実習生制度の廃止を求めている。労働力が必要なら、新しい仕組みを構築すべきだという考えだ。
そこで日弁連のPTが紹介したのが韓国の制度だ。実は韓国でも1990年代に「実習生制度」ができたという。日本の制度も参考にされているそうで、日本同様、実習生への人権侵害が頻発し、職場からの失踪、不法滞在も増加した。
社会問題化を受け、韓国は2004年に制度を見直した。「研修」をやめ、「外国人労働者の受け入れ」と真っ正面から受け止める「雇用許可制」を開始したのだ。
この制度は、大雑把に言えば、「国をまたいだハローワーク」のような仕組みで、韓国企業が韓国人に求人を出しても応募がないとき、初めて利用できる。企業は、相手国の就業希望者名簿から人材を選び、本人の同意が得られれば契約を結ぶ。労働者には、労働関係法を韓国人と同等に適用し、転職も一部可能だという。
大きな特徴は、韓国と相手国との間で、二国間協定を結び、公的機関が直接管理することで、ブローカーなどの中間搾取の排除を試みている点だ。労働政策研究・研修機構の呉学珠氏によると、この仕組みなどにより、外国人労働者の韓国への出国費用は、以前に比べ3分の1程度になったという。
導入の結果、不法滞在率が大幅に改善し、2011年には国連「公共行政賞」の大賞も受賞している。
制度を知ろうと、日本からも官民が視察で韓国を訪れているという。実際に視察したPTの大坂恭子弁護士は、「韓国でも(未だに違法労働など)問題は残っているが、(ブローカーなどによる)保証金の問題などは概ね解決できている。日本の制度設計の参考になる」と話していた。