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訴状のオンライン提出、弁護士から注文「合理的な運用方法を」「余計な手間が増えれば本末転倒」
画像はイメージ(EKAKI / PIXTA)

訴状のオンライン提出、弁護士から注文「合理的な運用方法を」「余計な手間が増えれば本末転倒」

内閣のもとに設置された「日本経済再生本部」は、2017年10月から、裁判手続等のIT化についての検討会を設置し、検討を始めました。

今年1月26日の会議の配布資料の中で、民事裁判の訴状について、現行の郵送・持ち込みによる提出から、「電子情報による訴状のオンライン提出へ一本化していくのが望ましいのではないか」と記されています。さらに、書証や委任状といった証拠書類や被告からの答弁書などについても、オンライン提出を検討しているようです。

一方で、資料の中では、本人確認を含めたセキュリティリスクや濫用防止の方法の検討必要性にも言及しています。また、2月7日の会議資料では、民事裁判の訴訟提起だけでなく、期日調整や争点整理でのITツールの活用についても、検討の必要性が記載されています。

今回、弁護士ドットコムに登録している弁護士に、民事裁判の訴状や書面のインターネットを経由した提出サービスができたら、活用するかを聞きました。

・「積極的に活用」が多数派

以下の4つの選択肢から回答を求めたところ、33人の弁護士から回答が寄せられました。

(1)積極的に活用する→27票

(2)できるだけ活用する→3票

(3)できるだけ使わない→0票

(4)使う気はない→3票

活用に前向きな意見が30票、活用に後ろ向きな意見が3票となりました。前向きな意見の中でも、もっとも活用に前向きな「積極的に活用する」が27票となりました。

活用に前向きな意向を示した弁護士からは、期待する声と同時に、「テレビ電話やスカイプを活用して、遠隔地の裁判所に出頭しなくても弁論手続に参加できるようにする等の改革を期待」「他士業のオンライン化された業務分野(登記・税務等)に弁護士が積極的に進出するきっかけともなりうる」といった期待も寄せられた。

活用に後ろ向きな意向を示した弁護士からは、「運用は不明だが、かえって手間の多い仕組みになるならば、使いたいとは思わない」「印刷して、職印を押して提出することに重みを感じている」といった声があった。

・積極的に活用する

【居林 次雄弁護士】

現状では、書面第一主義で、不合理さが目立ちます。 コンピュータという合理的なものがあるのに、わざわざ手書き書面でなければ受け付けない、という建前は時代遅れです。 コンピュータによる資料を受け付けるとなれば、訴訟当事者の便益は増します。 裁判所が、昔ながらの書面主義を通すことにより、弁護士事務所や裁判所の書面管理は膨大となり、又企業の合理化にも水を差します。 コンピュータ化が進むことにより、訴訟の迅速化が図られて、社会の合理化にも役立ちます。 ゆくゆくは、電磁的記録そのものを証拠として認めるというところまで進めば、企業合理化、社会の合理化、引いては裁判所の合理化にも役立つでしょう。

【秋山 直人弁護士】

日本の司法のIT化は20年遅れていると言われています。 いちいち裁判所に行って書面に訂正印を押さないと訂正もできないとか、いい加減にやめてほしいです。 IT技術を活用した裁判手続の合理化、特に、テレビ電話やスカイプを活用して、遠隔地の裁判所に出頭しなくても弁論手続に参加できるようにする等の改革を期待しています。

【藤本 尚道弁護士】

すでに民事訴訟手続にFAXを活用するようになって久しく、オンライン提出に対する私ども弁護士の「抵抗」も少なくなっていると感じます。 殊に、訴状等の提出がオンラインでできるなら、今まで持参か郵送しか駄目だったのが、かなり便利になるのではないかと、ひそかに期待しています。 まあ、裁判所のことですから、制度が動き出してからあれこれと「不備」が出て来て、我々弁護士に「不便」や「無理」を強いることにもなるのでしょうが、それを気にしていては何事も先には進めませんから…ね。

【関 大河弁護士】

積極的に利用します。 オンラインを活用すれば弁護士の仕事は、おおきく飛躍するでしょう。海外や遠方からでも書面が出せますし、郵送にかかる手間も省くことができます。 法律家は拠点に鎮座しなくてよくなるでしょう。 一方で、オンラインに一本化すると対応できない弁護士は業務が停滞してしまいます。折衷案となりますが、オンラインと書面の併用が望ましいかと思います。 弁護士本人が書面を提出したのかや、違法な行為が追認されないような配慮が必要との考えも、十分に検討に値するでしょう。

【堀 孝之弁護士】

訴訟のオンライン化には大いに賛成するし、実現すれば活用もする。 本気で訴訟手続のオンライン化を行うならば、その過程においておそらく日弁連が弁護士の電子署名の認証機関になるであろうが、そのことは他士業のオンライン化された業務分野(登記・税務等)に弁護士が積極的に進出するきっかけともなりうるので、副次的にではあれ、弁護士の業務拡大をもたらす可能性もある。 対応できない(しない)弁護士や本人訴訟に対して配慮すべきとの意見も見受けられるが、オンライン申請を原則としながら紙申請にも寛容な登記実務を参考にするとよいと思われる。

【岡田 晃朝弁護士】

私は、まずは依頼者にとってどうかを考えます。 訴訟の迅速化、整理の簡略化、多額のコピー代の節約、移動時間や送料の省略だけでなく、弁護士費用の低下も可能でしょう。すべて依頼者にメリットがあることです。 そういう依頼者にメリットがあることには積極的に参加したいと考えております。 もちろん、考えられるリスクの回避策は必要でしょうが。

【佐久間 玄任弁護士】

訴訟手続のオンライン化は、依頼者・弁護人・裁判所いずれにとってもFAXより便利な方法です。経費も削減されるし、資源保護にも資することになります。手続も迅速に進みます。積極的に活用したいと思います。 ただ、民事訴訟規則2条1項で必要とされている、裁判所に提出すべき書面に要求される記名押印についてどのような扱いになるのかが気になります。(別の方法で代用するのか、一度印刷したものをPDFにしてオンライン提出するのか。)

【水野 遼弁護士】

私は弁護士になってはじめてファックスという機械を使いました。監査法人にいたときはなんでもメールでやりとりしていたので、タイムスリップしたような気分になりました。 アメリカではデータで訴訟関係の書類を提出できるところもあると聞きますし、日本もこれからIT化をもっと進めて欲しいです。若手世代の弁護士の活躍の場が増えるという意味でも賛成です。

・できるだけ活用する

【今西 隆彦弁護士】

IT化すれば便利にはなるでしょう。基本的には、活用していく方向です。 ただ、他の先生方も書いてらっしゃいますが、仮にIT化することで余計な手間や作業が増えるのであれば、それは本末転倒になるのではないかと思います。「IT化はあくまで利用者の利便性向上のため行われるもの」と考えるからです。 具体的にどのようになるかはわかりませんが、「利便性向上」という本来の目的を外れない改革であることを切に願います。

【大村 真司弁護士】

原稿、FAXでの直送が認められている主張書面や証拠のやりとりをオンライン化することについては、条件付き(セキュリティの確保など)で賛成です。しかし、あくまでも双方に弁護士がついているケースに限ります。 しかし、訴状には送達の問題があります。どうやって裁判所は送達の確認をするのでしょうか。アメリカでは弁護士の訴状はオンライン提出していると言いますが、これは、弁護士が裁判所の管理下にあるアメリカだからできる制度だそうですし、日本は本人訴訟の割合が高いため、その点の考慮も必要です。 そうすると、少なくとも送達は紙によらざるをえませんが、後者の場合、裁判所がプリントアウトしてくれるはずもなく、訴状はオンラインで提出して副本を後日裁判所に持参するというあほなことを強要されるのではないかという見方もあります。 ITの活用は避けて通れない道だと思いますが、段階的に導入するべきだと思います。

【濵門 俊也弁護士】

裁判手続のIT化は、今後の目指すべき方向でしょう。できるだけ早い時期の具体的な制度導入を期待したいと思います。

・使う気はない

【亀ヶ谷 貴之弁護士】

運用がどのようにされるか不明ではありますが、かえって手間の多い仕組みになるならば、使いたいとは思えません。 具体的には、弁護士に対して一度印刷した書面に職印を押したうえで、PDFなどの形式にし、それを提出するよう求め、書記官はこれを印刷して記録として綴じるというのでは、PDFにする分、手間が増えてしまいます。 オンラインで受け付けるのは大変ありがたい話ではありますが、どうか合理的な運用方法を定めてほしいと願ってやみません。 また、コメント機能や変更履歴の記録機能を用いた書面のやり取りがされるようになれば、今よりも合理的かつ迅速な訴訟運営に資するのではないかと考えております。

【大和 幸四郎弁護士】

古い考えですみません。 印刷して、職印を押して提出することに重みを感じています。 訴えを提起することは、それなりの覚悟をもってやっているので、簡略化には賛成できません。 こういったことを推し進めていくと、民事手続きだけでなく、刑事手続きにおいても、起訴状もオンライン提出が可能になりかねず、セレモニーとしての裁判の軽視化を招く危惧感があります。

 

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