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「30年以上前」の扇風機回して家全焼、メーカーの責任はどんな場合に問える?
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「30年以上前」の扇風機回して家全焼、メーカーの責任はどんな場合に問える?

家電製品の経年劣化による事故が少なくないようだ。消費者庁によると、2015年5月までのおよそ8年間に、火災などの重大製品事故が279件あったという。製品としては扇風機の事故がもっとも多く、全体の3割以上。中には家屋が全焼する事故もあったそうだ。また、製造年別で見ると製造後30年以上経過した製品の事故が半数を占めていた。

使用期間が長くなれば、故障や事故の可能性が高くなるのは当然だが、もし事故が起こった場合、製造後どのくらいの期間であれば、メーカーの責任を問えるのだろうか。浅野健太郎弁護士に聞いた。

●10年経つと責任追及が難しくなる

家電製品に欠陥があって事故が起きた場合、「製造物責任法」に基づいて、メーカーに損害賠償責任を追及できる可能性があります。ただし、請求できるのは、損害および誰が賠償義務者(メーカー)であるかを知ったときから3年間とされています。さらに、メーカーが製品を引き渡したときから10年経過した場合だと、事故が起きて3年以内であっても損害賠償請求はできなくなります。

近年、家電製品の経年劣化による事故が多発していますが、経年劣化による事故の損害は、原則としてメーカーの責任ではないと考えられています。製造物責任法でいう「欠陥」は、その製品が通常備えているべき安全性を欠く場合をいいます。一方、「経年劣化」とは、たとえば部品の摩耗など、長期間の使用に伴い通常生じる品質や性能の低下をいうため、製品の「欠陥」とはいいにくいのです。

ただし、いわゆる経年劣化であっても、通常の耐用年数に比べて明らかに早く部品等が損耗したケースなどは「欠陥」といいうる場合があります。この場合は、消費者が「欠陥」にあたることを主張・立証しなければなりません。メーカーの落ち度が大きければ、製造物責任法に基づく責任のほか、民法上・刑法上の責任を問う余地もあります。

もっとも、消費者に安全な製品を供給することは、メーカーの基本的な責務といえます。したがって、原因が経年劣化であるかを問わず、メーカーが製品事故の発生やその可能性を発見した段階で、迅速かつ的確なリコールを自主的に実施することが、企業の社会的責任として求められるところです。実際に何年も前の製品を自主回収しているメーカーは少なくありません。

このように、メーカーに対しては、いくつかの責任追及の方法がありますが、いずれも事後的な救済手段にとどまりますし、責任を問えないケースも多くあります。消費者としても事故を防ぐ意識を持つことが必要でしょう。たとえば、メーカーや報道などの情報提供を待つだけでなく、経年劣化の予兆(異音、異臭、熱、振動など)を見逃さないこと、製造年・標準使用期間を確認して必要に応じて使用を中止することで、事故を未然に防ぐことができます。製品によっては、購入時に所有者登録をすることで、メーカーから点検時期の連絡を受けることもできます。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

浅野 健太郎
浅野 健太郎(あさの けんたろう)弁護士 弁護士法人ベリーベスト法律事務所
弁護士法人ベリーベスト法律事務所代表弁護士 慶応義塾大学法学部法律学科卒、ニューヨーク大学法科大学院(LL.M.)修了 日本とアメリカニューヨーク州の弁護士資格を持つ。 著書「こんなときどうする 製造物責任・企業賠償責任Q&A その対策のすべて」(共著 第一法規)など

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