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「捏造記者」という表現は名誉毀損か?「元朝日植村記者VS週刊文春」の裁判開始
元朝日新聞記者の植村隆さん

「捏造記者」という表現は名誉毀損か?「元朝日植村記者VS週刊文春」の裁判開始

元朝日新聞記者の植村隆さんが「”慰安婦捏造”朝日新聞記者」などと書かれ名誉を傷つけられたとして、東京基督教大学の西岡力さんと「週刊文春」を発行する文藝春秋を相手取って、慰謝料などを求めた裁判の第1回口頭弁論が4月27日、東京地裁で開かれた。

植村さんは1991年、慰安婦として名乗り出た金学順さんについて、朝日新聞に署名入りの記事を書いた。その記事に対して、西岡さんは著書やウェブサイト、雑誌に「意図的に事実を改ざんした」「悪質な捏造」などと書いた。文藝春秋は「週刊文春」2014年2月6日号で西岡さんのコメントが入った「”慰安婦捏造”朝日新聞記者がお嬢様女子大教授に」と題した記事を掲載した。

植村さんは「捏造はしていない」と主張し、名誉を傷つけられたなどとして、慰謝料1500万円などを求めて訴えた。一方、被告側の西岡さん・文藝春秋側は名誉毀損はないとして、真っ向から争っている。

●被告側の反論は?

東京地裁に提出された答弁書によると、被告の西岡さん・文春側は次のように主張している。(1)植村さんは、金学順さんの経歴として「女子挺身隊」と記した。(2)植村さんは、金学順さんが貧困のため母親にキーセンとして売られたことや、義父にだまされたことなどを報じなかった。(3)植村さんは、義母の裁判を有利にするため、誤解させる内容の記事を書く動機があった。

被告側はこうした点から、記事が捏造だと評しても「意見や論評として、域を逸脱したものではない」として、被告らの記事が名誉毀損にはあたらないとしている。

●原告側はどう主張しているか?

これに対し原告の植村さん側は次のように反論した。(1)当時の報道は、産経新聞や読売新聞も含め、慰安婦のことを「挺身隊」と書いている。(2)キーセンについては産経・読売など他紙も触れず。当時のメモを見ても、金さんは「義父にだまされた」とは言っていない。(3)記事を書いたのは、提訴より前で、義母に初めて出会うよりまえの話だった。

そして、「捏造という言葉の意味は、『意図的な事実の改ざん、でっち上げ』のことで、論評ではなく事実の摘示だ」として、被告らの記事が名誉毀損にあたるとしている。

植村さんは第1回口頭弁論後、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。植村さんは、インターネットで「売国奴」などと激しく攻撃され、脅迫状や無言電話があるほか、高校生の娘まで嫌がらせを受けていると告白。こうしたことをやめさせるためにも、「記事が捏造でないことを、司法の場で証明したい」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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