大阪市の橋下徹市長が2012年の衆院選当時、1カ月もの間、ほとんど公務についていなかったとして、その期間の給与を市に返還させるよう市民団体が求めた裁判で、大阪地裁は10月15日、「市長には職務専念義務がなく、給与の支給は違法でない」として、請求を棄却した。
橋下市長は当時、日本維新の会の代表代行だった。報道によると、訴えた市民団体は、橋下市長が2012年11月17日から、投票日翌日の12月17日までの26日間、公務を入れず、全国遊説などで市役所にも登庁しなかったと主張。橋下市長に1カ月分の給与82万円を返還させるよう求めていた。しかし、田中健治裁判長は「市長について職務専念義務を定めた規定はない」と請求を退けた。
なぜ、市長には「職務専念義務」がないのだろうか。そもそもどのようなものだろうか。齋藤裕弁護士に聞いた。
●ほかに仕事を持つ人も立候補できる
「地方公務員法35条は『地方公務員は原則として職務専念義務を負う』としています。これは、その勤務時間および職務上の注意力のすべてを、職務遂行のために用いなければならず、また、その地方公共団体がなすべき職務にのみ、従事しなければならないということです。
ところが、地方公務員法4条は『地方公共団体の首長などの特別職の地方公務員には原則として地方公務員法が適用されない』としています。そのため、市長には地方公務員法35条は適用されず、職務専念義務がないことになります」
一般の職員と比較して、不公平ではないだろうか。
「確かに、市長に職務専念義務がないことを不公平と感じても仕方ありません。しかし、市長に職務専念義務があるということになると、他に仕事を持っている人が市長になりにくくなるという側面もあります。ですから、一概に不合理とも言えないのです」
ただ、その義務がないとはいえ、働かなくても給料をそっくりもらえるというのは、一般の感覚では納得しにくいのではないか。
「職務専念義務がないといっても、市長としての仕事をきちんとやってくれないのでは困りものですね。もし、市長が職務に専念せず市長にふさわしくないような場合、有権者としてできることは、次の選挙で投票しないこと。そして、リコール制度により解職を求めるといったことでしょうか」
齋藤弁護士はこのように話していた。