陸上自衛隊中央情報隊の「現地情報隊」が、国内の大学教授らの「愛国心」などの情報を集めていた──。
熊本日日新聞が明らかにしたこの問題を受け、弁護士ドットコムニュースは7月、関連文書を防衛省に情報公開請求した。これに対し、防衛省は9月25日付で、文書が存在するかさえ明らかにしない「存否応答拒否」による不開示決定を出した。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●熊日がスクープ、直後に関連文書を情報公開請求
この問題をめぐっては、熊本日日新聞が今年7月22日に初めて報じた。
同紙によると、陸上自衛隊中央情報隊の現地情報隊は、日本国内の専門家らについて、思想の傾向や自衛隊への感情などの情報を本人の許諾を経ずに収集していたとされる。
熊本日日新聞は、こうした情報収集活動の中で、現地情報隊が「個人BSD報告書」や「継続接触伺」といったタイトルの文書を作成していたことも報じていた。
そこで、弁護士ドットコムニュースは7月27日、熊日の報道をもとに具体的な文書名を記載したうえで、日本に住む人たちの情報を調べる中で作成した文書や記録を、防衛省に情報公開請求した。文書を特定しやすくするため、請求書には熊日の記事を同封した。
●防衛省は不開示「あるかないかを答えるだけで能力が推察される」
これに対し、防衛省は9月25日付で不開示を決定し、同28日付で不開示決定を通知した。
不開示の理由について、通知書には次のように記載されていた。
<当該請求に係る行政文書の存否を明らかにすることにより、自衛隊の情報収集能力が推察され、自衛隊の任務の効果的な遂行に支障を及ぼし、ひいては我が国の安全が害されるおそれがあることから、法第5条第3号に規定する不開示情報を開示することと同様の効果を生じさせるため、法第8条の規定に基づき、その存否の応答を拒否することとしました>
つまり、文書が「ある」「ない」と答えること自体が、本来、不開示とすべき情報を明らかにするのと同じ結果をもたらすとして、文書の存在そのものについて回答を拒んだ、ということになる。
小泉防衛大臣は会見で「現時点で不適切な活動を行ったことは確認されていない」と述べた(2026年7月24日、防衛省HPのYouTubeより)
●「文民統制」逸脱の恐れも…防衛大臣「不適切な活動は確認なし」
小泉進次郎防衛大臣は7月24日の記者会見で、現地情報隊が「国外のみならず、海外事情に精通した国内の有識者等からも」情報を収集していると認め、その根拠は防衛省設置法4条1項4号だと説明した。
しかし、具体的な活動内容については説明せず、「現時点で不適切な活動を行ったことは確認されておりません」と述べた。
活動の存在を大臣が認めた一方で、その活動で作成された文書があるかどうかは答えられない──というのが、今回の防衛省の判断ということになる。
ただ、熊日によると、こうした市民を対象にした組織的な情報収集活動が、政治家や官僚に知らされないままおこなわれている疑いもある。
小泉防衛大臣は会見で「必要な情報は報告されており」と述べたが、この疑惑が事実であれば、シビリアンコントロール(文民統制)の観点からも検証が必要な問題といえる。
●過去には内閣情報調査室に関する答申も…審査請求へ
行政機関による情報収集をめぐっては、防衛省とは別の機関について、過去に「存否応答拒否」が問題となったケースがある。
内閣情報調査室による情報収集に関する行政文書の開示請求をめぐり、総務省の情報公開・個人情報保護審査会は2017年3月、「収集能力が推察される」とする国側の主張を退け、存否応答拒否による不開示決定を取り消すべきだとする答申を出している。
弁護士ドットコムニュースは、今回の防衛省の不開示決定を不服として、防衛大臣に審査請求した。