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「仮面女子」猪狩ともかさんの看板下敷き事故、「国の責任」を認めない判決が確定
東京地裁(弁護士ドットコムニュース)

「仮面女子」猪狩ともかさんの看板下敷き事故、「国の責任」を認めない判決が確定

看板の下敷きになり、車いす生活となったアイドルグループ「仮面女子」の猪狩ともかさんと両親が、安全対策を怠ったとして国に計1000万円の損害賠償をもとめた裁判で、猪狩さん側の請求を棄却した東京地裁(成田晋司裁判長)の判決が確定したことが7月13日までにわかった。

6月27日の判決で、地裁は国による看板の管理を認めなかった。地裁によると、双方が控訴せず、7月12日に判決が確定した。

●土地の所有者である国の管理責任を問題視した

判決文によれば、猪狩さんは2018年4月、東京都文京区の湯島聖堂近くを歩いていた際、敷地内に設置されていた木製の看板が倒れ、その下敷きになって、胸腰椎脱臼骨折などの大ケガを負った。

その後、両下肢完全麻痺などと診断され、車いすで芸能活動を続けている。

湯島聖堂と敷地を所有しているのは国だが、管理しているのは国から委託を受けた公益財団法人だ。判決文によれば、猪狩さんと団体との間で2020年3月、裁判外で和解が成立し、相当額の和解金が支払われていた。

猪狩さんは昨年、国の管理責任を問うとして、国家賠償法などにもとづき、損害賠償をもとめる裁判を起こした。

●判決「看板は国が管理していない」

主な争点は、看板が国家賠償法に定める「公の営造物」にあたるかどうか。看板が「公の営造物」、つまり、国が設置・管理していて、それに問題があったといえれば、賠償責任が認められることになる。

しかし、東京地裁は、看板の掲示内容は「論語素読」や「易経講義」など、公益財団法人による生涯学習講座が大部分を占めていて、その内容の決定・変更は法人によるものと推認されるため、国による設置・管理は認められず、「公の営造物」にあたるといえないとした。

また、看板を所有・占有していたのも国ではないとして、賠償責任を認めなかった。

猪狩さんは、治療費や介護費、後遺障害逸失利益など事故で被った損害を算出していた。

判決の日、猪狩さんはツイッターに思いを投稿した。

〈裁判の件について。私が脊髄損傷を負う原因となった看板は国の所有地内に設置されていたものですが、公益財団法人が設置したものであり国は設置や管理に関与していない為、国に責任はないという判決に至りました。再発防止の為にも、公共物は国も定期的に点検を促すなど、改善されることを願います〉

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