スカイマークは危機から脱することができるか——。航空機大手・エアバス社の旅客機「A380」4機の購入を断念したことで、同社から700億円の違約金を求められていた問題は、違約金を200億円規模に減額することで大筋合意したと報じられている。
朝日新聞の報道によると、エアバスは「スカイマークの経営に影響を与えない金額にする」と態度を軟化させ、前払金として受け取った約230億円の範囲に収める考えを示しているという。
スカイマークは2014年9月中間決算で特別損失を計上する方針で、厳しい状況が続くことが予想される。200億円規模の違約金は経営にどのような影響を及ぼすのだろうか。佐原三枝子税理士に聞いた。
●薄氷を踏むような資金繰りの厳しさ
「スカイマーク社のような証券市場に上場している会社は、公認会計士の集団である監査法人の監査を受けなければなりません。決算が正しいものであることを監査法人がチェックし、そのレポートとともに決算を公開し、投資家はその情報をもとに投資判断をします。
スカイマーク社は2014年第1四半期決算で、監査法人から『継続企業の前提に関する重要な疑義』があると書かれました。平たく言えば『大丈夫?』と公に言われたのです。
これは、A380の購入契約のキャンセルに伴い、多額の違約金の支払いが、経営の根幹を揺るがしかねないと心配されたからです」
では、違約金が700億円から200億円程度に変わることで、どういう影響があるのだろうか。
「私は税理士ですから、もっぱら中小企業とお付き合いをさせていただいていますが、会社の規模が異なっても共通することは、資金があれば会社は存続する、ということです。
違約金の額が『前払金として受け取った230億円』の範囲で収まるということは、これ以上スカイマーク社が追加払いをしなくても済むことを示しています。
前払金は前期(2014年3月期)にすでに支払われていますが、支払った資金は『資産』として計上されています。この前払金がもう戻ってこないと決まると、今期の決算(2015年3月期)で、会計上は『費用』に振り替えられます」
具体的にはどうなるのだろうか。
「スカイマーク社の資金は2013年3月期に230億円あったものが、この前払金の支払いが影響し、2014年3月期には70億円まで減っています。手元の資金をかなり失っているのです。
それに追い打ちをかけるように、業績を見ると、燃料費の高騰や空席率の上昇などから、2013年3月期から本業の利益率が低下しており、2014年3月期ではさらに悪化しています。
230億円を捨てることになった上に、利益が薄くなっているので、資金繰りは薄氷を踏むようになるでしょう。ですので、業績改善の手立てを打つ以外に、金融機関からの借入も視野に入れているようです」
違約金の額は200億円規模まで減額したものの、今後の経営は非常に苦しい展開になりそうだ。
【取材協力税理士】
佐原 三枝子 (さはら・みえこ)税理士・M&Aシニアスペシャリスト
兵庫県宝塚市で開業中。工学部卒、メーカー研究所勤務から会計の世界へ転向した異色の経歴を持つ。「中小企業の抱える悩みをすべて解決したい!」という思いで、税務にとどまらず、経営改善対策、M&Aによる事業承継を手掛けている。
事務所名 :佐原税理士事務所
事務所URL:http://www.office-sahara1.jp/