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KADOKAWAとドワンゴが一つになる――株式会社の「経営統合」3つの方法とは?
株価への影響などから、企業統合は秘密裏に進められることが少なくない

KADOKAWAとドワンゴが一つになる――株式会社の「経営統合」3つの方法とは?

出版大手のKADOKAWAと動画配信大手のドワンゴが、10月1日に経営統合すると発表した。持ち株会社「KADOKAWA・DWANGO」を設立し、KADOKAWAとドワンゴがその傘下に入る形だ。

文芸・アニメやゲームなどメディアミックスに強いKADOKAWAの豊富なコンテンツと、ドワンゴが持つ動画配信プラットフォームの「niconico」を融合させることで、「世界に類のないコンテンツプラットフォームの確立」を目指すという。

両社はともに東証一部に上場している株式会社だが、今回の「経営統合」はどんな方法でおこなわれるのだろうか。企業法務にくわしい今井俊裕弁護士に聞いた。

●経営統合の手法はいくつもある

「株式会社の経営統合をする際には、何らかの形で企業買収(M&A)を行うことになります。M&Aの手法はいくつかありますが、ここでは『合併』と『株式買収』、『株式移転』の3つについて説明しましょう」

このように今井弁護士は切り出した。

「一番シンプルなのは『合併』です。これは、二つの会社が完全一体となり、一つの会社になるものです。統合の究極的スタイルです。

しかし完全に一つの会社になってしまうと、両社の社風・企業文化や、それぞれの従業員の労働条件の相違に十分に配慮できず、かえって合併後に摩擦と混乱をもたらすことがあります。

そこで、両社を一つの会社にすることを回避しつつ、経営を統合する方法として『株式買収』があります」

つまり、A社がB社の株を買うことで、B社を所有・支配するという関係になれば、それぞれの会社組織はバラバラだが、同じ経営陣が2つの会社を支配できる。つまり「経営統合」ができるというわけだ。

●「株式移転」という方法もある

「この『会社の支配』は、通常は発行済み株式総数の過半数(つまり50パーセント超過)を買収・保有すれば完成すると考えられています。

しかし、明日に何が起きるか予想できない現代の複雑な経営環境下で、より迅速・確実に意思決定をするためには、支配をより強化したいという考えもあります。

その『会社支配』という観点でみるならば、相手の発行済み株式のすべてを買収して、100パーセント子会社にするのがベターと言えます」

ただ、この「100%完全子会社化」を、株式を上場している企業に対して行うのは、難しそうだ。

「そうですね。何万人もいる株主全員から買収するなんて、現実には不可能です。そこでこうした際には、『株式移転』と呼ばれる方法を利用します」

株式移転とは、どんな方法なのだろうか?

「新たに設立するX社へA社の株式を移転させ、その代わりにA社の株主らに対して、X社が新たに発行する株式を交付するという方法です。その結果、X社とA社は100パーセント親子関係となります。

これは、A社の株主総会の特別決議(出席した株主の議決権の3分の2以上)で、実施が可能です。つまり、すべての株を買収しなくても、X社とA社の完全親子関係を実現できるのです」

●KADOKAWAとドワンゴの「経営統合」の方式は?

では今回、KADOKAWAとドワンゴがおこなう「経営統合」は、どんな形式なのだろうか。

「今回発表されたのは、2社が合同して、経営統合を目的に『株式移転』を行うという方法ですね。つまり、A社とB社が合同してX社を設立して、2社ともX社に株式を移転させ、2社ともにX社の100パーセント子会社となるのです」

こうすれば、新しくできたX社の経営陣が、A社の経営についても、B社の経営についても、担うことができるわけだ。

今井弁護士は「ともにX社の子会社なので、A社とB社は兄弟会社とも呼ばれます。このような形で、A社とB社が合同することで、完全親会社を設立することができるのですね。これは株式移転の妙味の一つです」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

今井 俊裕
今井 俊裕(いまい としひろ)弁護士 今井法律事務所
1999年弁護士登録。労働(使用者側)、会社法、不動産関連事件の取扱い多数。具体的かつ戦略的な方針提示がモットー。行政における、開発審査会の委員、感染症診査協議会の委員を歴任。

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