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話題の時計「フランク三浦」 パロディはどこまで許される?
パロディ商品のガイドラインや基準はあるの?

話題の時計「フランク三浦」 パロディはどこまで許される?

高級時計ブランド「フランクミュラー」をもじった「フランク三浦」という時計が話題を呼んでいる。文字盤のシャレたデザインなど、パッと見は「本家」に通じる部分もあるのだが、盤面にはハッキリと「フランク三浦」のロゴが……。「ミウラ」の部分をあいまいに発音して笑いをとるジョークグッズとして人気だという。

デザインだけでなく、裏面や説明書にも「笑える要素」がちりばめられており、あくまでもネタであることは明確だ。その点で、消費者をだます「偽物」や「コピー商品」とは違う。だが、北海道土産の定番「白い恋人」のパロディ商品「面白い恋人」をめぐる裁判があったように、パロディなら何でも許されるというわけではなさそうだ。

パロディは、名前やデザインなど何かしら「本家」と似た部分がないと成り立たないが、法律的にはどこまで許容されるものなのだろうか。パロディ商品のガイドラインや基準のようなものはあるのだろうか。知的財産権にくわしい近藤恭子弁護士に聞いた。

●パロディと本家の商標がどれだけ類似しているのか?

「パロディが許されるかどうかについて特別な法律の規定はありません。したがって、商標法等の個々の法律において、権利侵害があるかを検討することになります」

パロディにもいろいろあるが、「フランク三浦」のような有名商品の名前をもじったパロディの場合は、本家の「商標権」を侵害しているのではないか、ということが問題になる。

「商標権の侵害(商標法37条1号)にあたるかどうかを検討する際に、まず注目するのは、問題の商品に使用された商標の『類似性』です。その商標の外観・観念・称呼(呼び方)が取引者に与える印象等で、どこまで類似しているのかを判断します。

そのうえで、具体的な取引状況を考慮して、対比される商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所について『誤認混同』を生じる恐れがあるかどうかを検討します。そして、商標権の侵害が認められるときは、差止請求や損害賠償請求の対象となります」

つまり、パロディ商品に使われている商標が「本家の商標」とどれだけ似ているかがポイントとなるわけだ。そして、パロディと本家の商標がそっくりで、本家と混同してしまう恐れがある場合は、商標権侵害にあたるということだ。

●「フランク三浦」と「FRANCK MULLER」は呼び方が似ているが・・・

では、「フランク三浦」の場合はどうなのだろう?

「今回の『フランク三浦』について検討すると、本家である『FRANCK MULLER』と、称呼において共通する点がないわけではありません。しかし、『フランク三浦』と『FRANCK MULLER』とでは外観に差異があり、価格帯も数千円台と数百万円台というように大きく異なっています。

そのような点からすると、取引者が商品の出所につき誤認混同をすることは、通常考えられないといえます。したがって、『類似』(商標法37条1号)にはあたらず、商標権侵害は成立しないと考えられます」

どうやら「フランク三浦」が「FRANCK MULLER」から商標権侵害で訴えられる可能性は小さいといえそうだ。だが、近藤弁護士によれば、商標権以外の問題も考慮する必要があるという。

「商品の出所につき混同の恐れがない場合でも、著名な商標の顧客吸引力を利用することによって不正に利益を得る場合や、商標の使用が企業のブランド力を毀損する場合には、不正競争防止法2条1項2号や一般不法行為が問題となる可能性があります」

ものまねタレントや二次創作の隆盛にみられるように、日本ではさまざまな「パロディ」が次から次へと生まれて、我々を楽しませてくれている。ときには商標権の侵害などで訴えられてしまう場合もあるだろうが、できるだけパロディと本家が「共存共栄」していけることを願いたい。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

近藤 恭子
近藤 恭子(こんどう きょうこ)弁護士 親和法律事務所
大阪弁護士会所属。取扱分野は、会社法、渉外法務、知的財産権、個人情報保護その他民事商事法務全般。「依頼者のニーズをくみ取り、迅速適切な事件処理をモットーにしています」

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