他のサイトで公開されている音楽などのコンテンツを無料でダウンロードできるようにする、いわゆる「寄生型サイト」がこのほど、全国で初めて摘発された。
JASRAC(日本音楽著作権協会)などの発表によると、動画サイト「ニコニコ動画」に掲載されている動画を音楽ファイルにして、不特定多数の者にダウンロードさせていたとして、配信サイト「にこさうんど」を運営していた男が5月上旬、著作権法違反(公衆送信権および送信可能化権侵害)の疑いで北海道警に逮捕された。
「にこさうんど」は、ニコニコ動画に公開されている動画の音声ファイルを抜き出して、ダウンロードできるという仕組み。動画ページのURLを入力するだけで簡単にファイルをダウンロードできたという。2月に閉鎖されるまで、1日あたり約1500件の利用があり、約1億3000万円もの広告収入を得ていたという。
問題になったサイトは、「公衆送信権」や「送信可能化権」を侵害しているとされたわけだが、そもそも、これらはどんな権利なのだろうか。また、どんなことをしてしまうと、それらを侵害したことになるのだろうか。著作権法にくわしい梅村陽一郎弁護士に聞いた。
●音楽をダウンロードさせるには「公衆送信権」が必要
「著作権法では、『著作者は、その著作物について、公衆送信を行う権利を専有する』と定めています」
梅村弁護士は、公衆送信権を定めた条文を紹介する。
「『公衆送信』とは、たとえば、ホームページに文章や写真などの著作物を掲載して閲覧させたり、音楽や映像などの著作物を視聴させたりして、インターネットで広く配信することをいいます。
また、その前段階として、広く誰かにダウンロードしてもらうために、ある著作物をダウンロード可能な状態にすることを『送信可能化』といいます。送信可能化権は、公衆送信権の中に含まれている権利です」
難しい気もするが、たとえば音楽の世界では、どういうことになるのだろうか。
「音楽であれば、作詞家や作曲家、あるいは、音楽出版社やJASRACなど、これらの者から著作権を譲渡された者が、送信可能化権を含む、公衆送信権を持っていることになります。
そして、音楽を視聴させたり、ホームページに掲載することは、公衆送信権がなければできません。著作権者以外でこのようなことをしたい場合は、必ず権利者の許可が必要です」
「にこさうんど」は、著作権者に無断で、音楽ファイルをダウンロードできるようにしていたようだ。
「そうですね。報道によれば、『にこさうんど』は権利者に無断で送信可能化していますね。この時点で、送信可能化権の侵害になります。さらに、実際に多くの音楽ファンに、そのデータをダウンロードさせました。ここで、広く公衆送信権を侵害したと言えるのです」