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朝6時から大声で読経する隣人「うちはエアコンがない」と開き直り…やめさせられない?
画像はイメージです(mits / PIXTA)

朝6時から大声で読経する隣人「うちはエアコンがない」と開き直り…やめさせられない?

隣人が早朝から窓を開けて読経をしており、困っているーー。弁護士ドットコムに、そんな相談がいくつか寄せられています。

ある相談者の隣人は毎朝6時前から窓を開けて読経をするそうです。静かな時間帯でもあり、声のボリュームに悩まされています。そこで、相談者の夫が窓を閉めるようお願いに行きましたが、「仏教徒がお経唱えて何が悪い?!」「うちはエアコンや扇風機がないから窓開けてるんだ」と聞く耳を持ちません。

このような悩みを抱えるのは、相談者だけではないようです。

ネット上では「毎日決まった時間から、お経のようなテープが聞こえてくる」「毎日朝4時前後からお経が聞こえてきて、ほとんど毎日それで起きてしまう」など、読経を迷惑だと感じる人は多いようです。

しかし、どんな宗教を信仰するかは自由ですし、その教えに基づいて宗教行為をすることも認められるべきでしょう。弁護士ドットコムには父親が日課でやっている読経を続けさせてあげたいという相談も寄せられていました。

読経をする人も、その近くに住む人も、どちらにもストレスのない住環境にするために、どうすればいいのでしょうか? 弁護士で僧侶という「二足のわらじ」をはく本間久雄弁護士に聞きました。

●「受忍限度論」という枠組みで判断する

——相談者はどのような対応をすればよいのでしょうか

今回の相談を法律的に解決する場合、「受忍限度論」という枠組みで判断することになります。

受忍限度論とは、騒音・振動・悪臭・日照など生活環境に関する被害が問題となっている事件に用いられる判断枠組みです。振動・騒音等の発生源の種類や発生する頻度・時間帯、被害の性質や程度、当該地域の性格、加害者側の対応など、種々の事情を考慮して判断されます。

受忍限度の判断にあたっては、客観的な事実経過をしっかりと記録することが重要です。

今回の場合、(1)毎朝の読経の時間帯を日記等に記録、(2)騒音測定器を設置して、読経が何デシベルであるかを毎日記録する、(3)隣人との交渉経過を日記等に記録する・できればやり取りを録音する(裁判所等に証拠として提出する場合は反訳する)、などを行うことが大切です。

——そのような記録をとった上で隣人と話し合っても解決出来なかった場合は、どうなりますか

裁判所において訴訟や調停をすることになるでしょう。その場合、慰謝料や読経の差止めを求めていくことになります。

その他、各都道府県に設置された公害審査会等が「公害紛争処理」として、あっせん・調停・仲裁等の手続を通じて加害者と被害者との間に入って、取り持ってくれます。「公害」というと、工場からの排水や煙害等が思い浮かびますが、日常生活上の生活騒音も公害として扱われるのです。

——毎朝の「鐘撞きの騒音」が問題になった事例では…

相談者の方は、まだ眠たい早朝から大きな声の読経を聞かされ日々辛い思いをされているものと思われます。

他方、隣人は、真摯な信仰心から日々の読経を行っているものと思われます。この点、寺院の毎朝の鐘撞きの騒音が問題となった高岡簡裁昭和45年10月1日判決(判タ255号203ページ)は、解決策として、以下の方法を提案しております。

(1)防音の措置を講ずること
(2)耳馴れを俟(ま)つて感情緩和に努力すること
(3)朝寝坊、夜更かし型を変更、是正すること
(4)明治二三年の時鐘施行規則のとおり、撞鐘点数を、その時数に拠らしめること

隣人との関係は今後も続きますので、できれば調停等を通じて円満に解決できることを望みます。

プロフィール

本間 久雄
本間 久雄(ほんま ひさお)弁護士 横浜関内法律事務所
平成20年弁護士登録。東京大学法学部卒業・慶應義塾大学法科大学院卒業。宗教法人及び僧侶・寺族関係者に関する事件を多数取り扱う。著書に「弁護士実務に効く 判例にみる宗教法人の法律問題」(第一法規)などがある。

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