神奈川県鎌倉市由比ガ浜の路上で、水着姿で歩いていた女性をスマートフォンで隠し撮りしたとして、50代男性が8月4日、県迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)の疑いで、鎌倉署に現行犯逮捕された。
報道によると、男性は8月4日昼過ぎ、鎌倉市由比ガ浜の路上で、自分の水着にスマホを挟み込み、水着で歩いていた女性2人を隠し撮りした疑いが持たれている。女性たちの友人が不審に思って、男性に声をかけたところ、男性が逃走したため、取り押さえたという。
逮捕容疑は、県迷惑行為防止条例(卑わいな言動)違反というものだったが、全国47都道府県の迷惑行為防止条例にくわしい鐘ケ江啓司弁護士は「今回の逮捕には相当疑問だ」と話す。鐘ケ江弁護士に聞いた。
●鐘ケ江弁護士「恣意的な逮捕につながりかねない」
神奈川県迷惑行為防止条例3条1項3号の「前各号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること」で立件されたものと思われます。
この規定は、迷惑行為防止条例が具体的に掲げていない「卑わいな言動」を処罰するための条項で、各地の迷惑行為防止条例に同じようなものがあります。
着衣の上からの盗撮行為については、通常、迷惑行為防止条例に違反しませんが、北海道の同様の条例について、着衣の上からの盗撮を迷惑行為防止条例違反とした最高裁判例があります(最高裁判決・平成20年11月10日)。
最高裁は「ショッピングセンターにおいて女性客の後ろを執ように付けねらい、デジタルカメラ機能付きの携帯電話でズボンを着用した同女の臀部を近い距離から多数回撮影した本件行為(判文参照)は、被害者を著しくしゅう恥させ、被害者に不安を覚えさせるような卑わいな言動に当たる」としています。
(参考)最高裁判決・平成20年11月10日 http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=37011
しかし、この判例は、臀部(おしり)を対象に数分間つきまとって相当に執ような態様で撮影しているという事情を前提に、迷惑行為防止条例違反を認めたものです。
今回のケースは、報道だけではわかりませんが、こういった事情がなく、単に水着姿を動画撮影した、ということだけで逮捕したのだとすれば、問題だと思います。
マナーとして、公道上であっても、第三者を狙って撮影するのは適当ではないでしょうし、場合によっては肖像権侵害で損害賠償問題にもなり得るでしょう。しかし、警察がこれだけで容易に逮捕できるということも問題です。恣意的な逮捕につながりかねないと思います。