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店先に置いておいた「傘」を盗まれた・・・犯人はどんな罰を受ける?
店先の傘立てに置いていた傘が、店を出るときにはなくなっていた・・・という経験はないだろうか?

店先に置いておいた「傘」を盗まれた・・・犯人はどんな罰を受ける?

日本で一番盗まれているものは「傘」なのではないか。店先の傘立てに置いていた自分の傘が、店を出るときには無くなっていた、なんて経験は、ほとんどの人があるはずだ。

傘を勝手に持っていくほうは罪悪感がないのかもしれないが、盗まれた側としてはたまったものではない。怒りをぶつける先もなく、「安い傘だから・・・」と自分に言い聞かせて、泣き寝入りする人が多いだろうが、「犯人」を恨めしく思う気持ちもあるはずだ。

もし泣き寝入りせず、盗まれたことを警察に届け出たとしたらどうだろう。傘を盗んだ犯人には何という罪が成立して、どのような罰を受けるのだろうか。刑事事件にくわしい東山俊弁護士に聞いた。

●窃盗罪が成立するが、証拠集めが難しい

「傘を盗まれた状況にもよりますが、店先に置いていた傘の場合、わざと他人の傘を持っていったとすれば、窃盗罪が成立します」

このように東山弁護士は説明する。窃盗罪の罰則は法律上、「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」とされている。

では、傘を盗まれた場合、警察に被害届を出せば、犯人は処罰されるのか。「現実には、難しいでしょう」というのが、東山弁護士の回答だ。

「まず、窃盗罪の証拠を集めることが難しいといえます。傘を盗まれた場合の証拠として考えられるのは防犯ビデオ程度でしょうが、仮に傘を盗まれた場面が映っていても、住所・氏名が分からなければ、犯人を見つけ出すことは非常に難しいと思われます。

また、盗まれた傘を使っていたところをたまたま見つけたとしても、自分が持っていたのと同じ傘かどうかを証明することは難しいでしょう。

さらに、同じ傘であることを証明しても、『間違えて持って帰ってしまった』『別の人から買った』といった言い訳をされてしまうと、その人が故意に盗んだことの証明は難しいのが現実です」

●被害額が少ないので、処罰も軽くなってしまう

このように東山弁護士は立証の困難さを指摘するが、もし確実な証拠を集めて、盗んだ犯人だと立証できれば、処罰は下るのだろうか。

「傘を盗まれた場合、被害額は数百円から数千円程度になることが多いと思われます。被害額が少ないため、逮捕されることもほとんどないでしょうし、罰もほとんど受けないでしょう」

そうなると、結局は泣き寝入りということになるのか。

「お怒りは分かりますが、犯罪としては軽いものですので、法律で対処するには限界があります」

このように東山弁護士はしめくくった。盗まれたほうとしては釈然としないだろうが、どうしても責任を取らせたいという場合は、確実な証拠を集めて、相手に損害賠償を請求するという手もある。だが、その場合、請求するためにかかる費用のほうが、賠償額よりも多くなってしまいそうだが・・・。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

東山 俊
東山 俊(ひがしやま しゅん)弁護士 東山法律事務所
東山法律事務所所長。大阪弁護士会所属。家事事件はもちろん、一般民事事件や刑事事件も幅広く取り扱っている。

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