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手術後わいせつ事件、無罪の医師「捜査が非科学的」「報道やネットの投稿で傷ついた」
会見する男性医師

手術後わいせつ事件、無罪の医師「捜査が非科学的」「報道やネットの投稿で傷ついた」

手術後の麻酔が残っている女性患者にわいせつな行為をしたとして、準強制わいせつ罪に問われた男性医師に対して、東京地裁は2月20日、無罪の判決を言い渡した。男性医師は判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いて、「ホッとしている」と話した。

男性医師は2016年5月、東京都足立区の病院で、女性の乳腺腫瘍の摘出手術を担当したあと、全身麻酔から覚醒途中だった女性の着衣をめくり、乳首を舐めて吸うなど、抗拒不能に乗じてわいせつな行為をおこなった疑いが持たれていた。

男性医師側が一貫して「冤罪」を主張した裁判では(1)「男性医師から乳首を舐めたり吸ったりされた」という女性の証言の信用性、(2)アミラーゼ鑑定やDNA鑑定が、科学的な証拠として認められるか――が争点となった。

東京地裁は判決で、(1)女性が麻酔による「せん妄」という状態で、性的な幻覚をみた可能性がある、(2)女性の乳首から検出されたアミラーゼとDNA型は、触診や別の医師との会話などで付着した可能性があり、DNA鑑定の信用性に疑いがあるとして、無罪を言い渡した。

●男性医師「100日以上拘束されて、社会的信用や職を失った」

男性医師は2016年8月、準強制わいせつの罪で逮捕されて、同年12月に保釈されるまで、100日以上勾留されていた。判決後の記者会見で、「警察の非科学的な捜査手法があった」と怒りをにじませつつ、「100日以上拘束されて、社会的信用や職を失った。警察から一方的な情報による報道や、それに悪乗りしたネット上の悪意ある書き込みで、私や家族、周りの人間が大きく傷ついた」と明かした。

主任弁護人をつとめた高野隆弁護士は「海外では、術後『せん妄』についてのガイドラインが定められている。日本では、ガイドラインや対策がまだできていない。医療現場における術後『せん妄』対策がなされていなかったことが、(逮捕・起訴に至ったことに)影響している」と指摘していた。

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