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FBから好みの女性の電話番号割り出し、交際迫る 「面識なくても」ストーカー?
画像はイメージです(Kazpon/PIXTA)

FBから好みの女性の電話番号割り出し、交際迫る 「面識なくても」ストーカー?

フェイスブックの検索機能を使って、好みの女性の電話番号を割り出し、繰り返し電話をかけたとして、大阪市の30代男性が10月中旬、ストーカー規制法違反の疑いで書類送検された。いずれも「面識のない女性」だったという。

報道によると、男性は2018年3月〜5月、20代女性に80回以上にわたって電話をかけて、「好きやで」などと話した疑いが持たれている。フェイスブックで、無作為に電話番号を検索して、好みの女性を見つけると、電話をかけて交際を迫ったり、卑わいなことを言ったりしていたそうだ。

驚いたことに、男性は約2年前から、約30人に電話をかけて、実際に2人と交際に発展したという。フェイスブックの機能が悪用されたかたちだ。フェイスブックでは、今年4月に、電話番号やメールアドレスを入力しても、検索結果が表示されなくなっている。

●ストーカー「面識なし」227件

今回のようにSNSを悪用した面識のない女性へのストーカー行為が摘発されるのは、全国でもめずらしいという。

ただ、警視庁によると、2017年のストーカー事案(2426件)のうち、ストーカー行為者と相談者との関係は、元交際相手が1128件(約47%)と最も多いが、面識なしも227件(約9%)となっている。

そもそも、お互いに「面識がなく」ても、ストーカーにあたるのだろうか。刑事事件にくわしい神尾尊礼弁護士が解説する。

●面識がない人に対しても「ストーカー行為」になる

「実務上、よく目にするのは、やはり(元)交際相手や同僚が多いです。ただ、ストーカー規制法上の定義をみると、もう少し広いです。

ストーカー規制法上の『ストーカー行為』とは、『同一の者に対し、つきまとい等を反復してすること』(2条3項)とされています。つまり、(1)『つきまとい等』を(2)同一人物に反復しておこなえば、ストーカー行為となります。

このうち(1)『つきまとい等』とは、(a)好意や怨恨目的で、(b)特定の人やその関係者に、(c)(一部の行為については不安を感じさせる方法で)つきまといや電話、メールなどをすることとされています(2条)。

次に、(2)反復性は、具体的に「◯回以上」が当たるとは言いにくいのですが、行為全体をみて判断されます。たとえば、つきまといは1回、メール1回、待ち伏せ1回でも、全体をみて反復していたと判断されることがあります。

以上のように、相手と面識があるという条件は入っていません。(b)『特定の人』というのも、特定ができればよく、たとえば『名前は知らないけれど電車でよくみかける人』であれば『特定の人』ということになります。

つまり、面識がない人に対しても、(1)つきまとい等を(2)反復しておこなえば、ストーカー行為ということになります」

●「まずは身の安全と、今後の抑止を念頭に置いて」

SNSを使って、電話番号を割り出す行為はどうだろうか。

「違法な手段を用いて電話番号を割り出せば問題でしょうが、SNSでは、電話番号が公開情報となっているケースが散見されます。

たとえば、フェイスブックでは、電話番号で検索できる人の範囲が、通常『全員』と設定されていました。つまり、友人でない人でも、電話番号で検索できてしまうのです。これは、言うなれば『SNSの正式な機能』であり、電話番号で検索することだけを切り取れば罪に問われないということになります」

SNS上のストーカーにどう対応すべきだろうか。

「SNS上であっても、先に述べたストーカー行為にあたれば、ストーカー規制法の対象になりえます。法律改正によって、電子メールのほか、ブログやSNSなどを用いた接触(個人ページにコメントするなど)も対象になりました(2条2項)。

ストーカー行為にあったら、迷わず、すぐに警察に行くことです。SNS上のストーカー行為も同様です。ただ、書込みなどは、消去されてしまうおそれがあるので、スクリーンショットなどで証拠として保全しておくことも大事です。

なかなか証拠がそろわないなどの問題を感じたら、弁護士に相談するのも手です。私であれば、警察に同行することもあります。費用については、犯罪被害者の援助制度が利用できないか検討します。民事的に損害賠償を請求していくことも考えられますが、まずは身の安全と、今後の抑止を念頭に置いて対応していくことが肝要だと考えています」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

神尾 尊礼
神尾 尊礼(かみお たかひろ)弁護士 東京スタートアップ法律事務所
東京大学法学部・法科大学院卒。2007年弁護士登録。埼玉弁護士会。一般民事事件、刑事事件から家事事件、企業法務まで幅広く担当。企業法務は特に医療分野と教育分野に力を入れている。

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