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危険「チャリスマホ」で激突して歩行者死亡、1億円近い賠償も…刑事上も厳罰化の流れ
自転車の「ながらスマホ」は危ない

危険「チャリスマホ」で激突して歩行者死亡、1億円近い賠償も…刑事上も厳罰化の流れ

スマートフォンを操作しながら自転車を運転し、歩行者にぶつかって、死亡させてしまうという事故が目立っている。いわゆるスマホ運転(ながらスマホ)によるものだ。交通事故にくわしい弁護士は「自転車事故による責任は決して軽いものではない」と警鐘鳴らす。

●元女子大生に禁錮2年(執行猶予4年)の有罪判決

神奈川県川崎市で2017年12月、当時大学生だった女性(20)が、自転車を運転中、歩道を歩いていた無職女性(当時77)にぶつかって、2日後に脳挫傷で死亡させるという事故が起きた。

元女子大生は当時、イヤホンをつけて音楽を聴きながら、スマホと飲み物を持って、自転車に乗っていたという。重過失致死の罪に問われた元女子大生に対して、横浜地裁川崎支部は8月27日、禁錮2年(執行猶予4年)の有罪判決を言い渡した。

また、茨城県つくば市で今年6月、スマホを見ながらマウンテンバイクを運転していた男子大学生(19)が、歩行者の団体職員の男性(当時62)をはねて、翌日に死亡させる事故があった。男子大学生は8月下旬、重過失致死の疑いで書類送検されている。

●1億円近い賠償を命じた裁判例も

いずれも相手を死亡させた事故だが、スマホ運転をしている人は少なくないのではないだろうか。交通事故にくわしい和氣良浩弁護士が解説する。

「スマホを操作しながら自転車を運転すること自体も、各都道府県の交通規則に違反し、道路交通法71条6号違反の罪に問われるため、5万円以下の罰金が科されます」(和氣弁護士)

それでは、スマホ運転中に、相手にぶつかってケガさせたり、死亡させた場合、どのような罪に問われるのだろうか。

「スマホの画面を注視していたことが、『過失』、場合によっては「重大な過失」となり、過失致死傷罪または重過失致死傷罪に該当します。最も重い重過失致死罪に問われた場合、5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金が科されます」(和氣弁護士)

事故の加害者は、被害者に対して、不法行為による損害賠償責任も負う。賠償金はどれくらいになるのだろうか。

「事故の状況や被害者の年齢、被害の程度によって賠償額は異なりますが、過去の裁判例では、事故によって被害者に重篤な障害を与えた場合や死亡させた場合に、1億円近い賠償を命じたものもあります」(和氣弁護士)

●自転車事故の厳罰化傾向も

こうした「スマホ運転」による交通事故の件数は飛躍的に増加している。和氣弁護士によると、元女子大生に対する判決から、自転車事故についても刑事上厳罰化の傾向がうかがえるという。

「これまでも、民事上では、自転車事故の賠償額は高額化の傾向にあり、なかには自転車事故によって相手を死亡させた当時11歳の加害者少年(の母親)に約9500万円もの賠償額を命じたものもあります。

自動車事故に関しては、法律の改正が相次ぎ、刑事上厳罰化がなされています。このような近年の動きからすれば、自転車事故に関して、刑事上も厳罰化の流れとなることも十分に考えられます。

自転車は幼い子供から高齢者まで利用する身近な乗り物であるだけでなく、場合によっては『凶器』となります。自転車事故による責任は、決して軽いものではありません。自転車運転中のスマホ操作がいかに危険な行為であるか、今一度思い返す必要があるでしょう」(和氣弁護士)

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(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

和氣 良浩
和氣 良浩(わけ よしひろ)弁護士 弁護士法人ブライト
平成18年弁護士登録 大阪弁護士会所属 近畿地区を中心に、交通・労災事故などの損害賠償請求事案を被害者側代理人として数多く取り扱う。

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