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2018年03月09日 09時57分

リニア談合、大成建設顧問逮捕、任意の取り調べに「25回」も応じたのになぜ?

リニア談合、大成建設顧問逮捕、任意の取り調べに「25回」も応じたのになぜ?
検察庁(kpw / PIXTA)

大手ゼネコンの大成建設は3月2日、「当社顧問の逮捕について」というタイトルの文書を発表した。リニア中央新幹線の建設工事をめぐる談合事件で、東京地検特捜部が大成建設の顧問(元常務)を独占禁止法違反の疑いで逮捕したことを受けて出したものだ。

捜査は2017年冬から本格化し、大成建設関係者は他のゼネコン(鹿島、清水建設、大林組)関係者と同様に任意捜査に応じてきた。さらに東京・新宿にある大成建設本社の家宅捜索も複数回受けた。こうした中、突然、顧問が逮捕されたことに大成建設は憤っている。

「顧問が当局の取り調べに対し12月8日以降、25回、約3ヶ月にわたり任意で応じているにも関わらず、逮捕されたものであり、到底承服いたしかねるものです」とコメントした。疑われている内容は独禁法違反に該当しないと考え、今後の捜査の過程で主張するという。

大成建設としては、任意捜査にこれまで何度も応じてきたにもかかわらず、逮捕して身柄拘束されるのは不当だということだろう。今回、鹿島の現役幹部も同容疑で逮捕されたが、報道によれば、不正を自主申告したとされる大林組と清水建設の関係者は逮捕されていない。今回の問題をどうみるか、元警察官僚の澤井康生弁護士に聞いた。

●罪証隠滅の恐れ、否定できず

ーー今回の問題をどうみていますか

「今回の東京地検特捜部による2社の関係者の逮捕については合理的な説明が可能です。まず、特捜部が任意捜査に協力して25回もの取り調べに応じていた関係者を逮捕したことについては、逮捕の必要性が認められるかが問題となります。逮捕の要件としては逮捕の理由と逮捕の必要性があげられます。逮捕の理由は『被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由』です(刑訴法199条1項)」

ーー逮捕の必要性についてはいかがですか

「逮捕の必要性については、『逮捕の理由がある場合であっても、被疑者の年齢や境遇、犯罪の軽重や態様など諸般の事情に照らして、被疑者が逃亡するおそれがなく、かつ、罪証を隠滅するおそれがないなど明らかに逮捕の必要がないと認められるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない』(刑事訴訟法規則143条の3)とされています。

このため、一般的には逃亡又は罪証隠滅の恐れがあることを指します。要は逃げる恐れも関係証拠を破棄したり隠したりする恐れもなければ逮捕の必要性なしとして逮捕できないし、どちらかが認められれば逮捕できるという結論になります」

ーー今回の逮捕は適法とみられるのでしょうか

「今回、ゼネコンの関係者は任意捜査に協力して25回もの取り調べに応じていたことから、逃亡の恐れは否定されるでしょう。他方、取り調べには応じていたものの談合の事実を認めず一貫して否認していたとのことですから、逃亡の恐れはなくとも罪証隠滅の恐れは否定できないと思われます。

現に報道によると大成建設は関係資料を社内から社員寮に移動させていたとのことですから、このような事情もあいまって罪証隠滅の恐れありと判断されたものと思われます。したがって、今回の逮捕は刑事訴訟法、刑事訴訟法規則の要件を満たし適法ということができると思います」

●「否認」した2社は逮捕、「自主申告」した2社は逮捕されず

「次に、今回は談合を自主申告した大林組と清水建設の関係者は逮捕されなかったのに対して、談合を否認した大成建設と鹿島の関係者が逮捕されました。

大林組と清水建設は談合を認めて自白したということですから罪証隠滅の恐れもないと判断されたのでしょうが、本件については2006年1月の独占禁止法の改正で導入された課徴金減免制度(いわゆるリーニエンシー)制度との関係からも説明が可能です」

ーーどのような制度でしょうか

「課徴金減免制度とは、事業者が自ら関与したカルテル・入札談合について、その違反内容を公正取引委員会に自主的に報告した場合、課徴金が減免される制度です。公正取引委員会は、調査開始日前に、最初に課徴金の免除に係る報告及び資料の提出を行った事業者(談合等の実行行為を行った役職員含む)については、刑事告発も行わないとされています(独占禁止法7条の2)」

ーー自供と引き換えに減刑などする司法取引に性格が似ていますね

「もともと談合は密室で行われることから証拠収集が困難であり容易に摘発できませんでした。課徴金減免制度は、不正に関与した事業者に『自首』した場合の見返りを与えることで、談合の摘発を容易にするための制度であり、司法取引に類似した制度といえます。

そのため、談合を自主的に申告した(いわば司法取引に応じた)大林組と清水建設には課徴金減免制度が適用され、仮に刑事告発は免れないとしても自主申告したという事実は有利な情状として斟酌されます。

以上より、自主的に申告して課徴金減免制度が適用される大林組と清水建設はいわば司法取引に応じたため刑事責任も悪質ではないとして関係者は逮捕されない一方、談合を否認している大成建設と鹿島は刑事責任も悪質であるとして関係者が逮捕されたことは、課徴金減免制度とのバランスからも合理的に説明できます」

(弁護士ドットコムニュース)

澤井 康生弁護士
元警察官僚、警視庁刑事を経て旧司法試験合格。弁護士でありながらMBAも取得し現在は企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所の非常勤裁判官、東京税理士会のインハウスロイヤー(非常勤)も兼任、公認不正検査士の資格も有し企業不祥事が起きた場合の第三者委員会の経験も豊富、その他テレビ・ラジオ等の出演も多く幅広い分野で活躍。東京、大阪に拠点を有する弁護士法人海星事務所のパートナー。代表著書「捜査本部というすごい仕組み」(マイナビ新書)など。
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