JR関西本線の普通列車内で2月上旬、異臭騒ぎが起き、乗客約20人が途中下車した。ケガ人はなかったが、約1時間45分にわたって運転が見合わされ、約4750人に影響が出た。報道によると、異臭の原因は、発酵食品の「臭豆腐(しゅうどうふ)」だったのではないかという説が浮上している。
JR東海によると、トラブルが起きたのは、2月7日午後1時過ぎ。JR関西本線の弥富駅で停車していた列車の乗客から「アンモニアのような異臭がする」という声があがった。警察が調べたところ、車内の床に液体がこぼれた痕が見つかった。また、同日夜、弥富駅のゴミ箱から臭豆腐が発見されたという。
臭豆腐は、豆腐を発酵してつくる食品で、強烈にくさいとされる。台湾などで、日常的によく食べられるそうだ。JR東海は、弁護士ドットコムニュースの取材に「現在のところ、異臭の原因は詳しくわかっていない」と説明した。
ところで、電車を遅延させた場合、鉄道会社から損害賠償を請求されることがある。もし仮に、異臭騒ぎの原因が臭豆腐だった場合、持ち込んだ客は賠償責任を負うのだろうか。前島憲司弁護士に聞いた。
●遅延騒ぎになる「予見可能性」まであるといえない
「今回のような異臭騒ぎについては、法的責任として、まず民事上の損害賠償責任を負うかどうかが考えられます」
前島弁護士はこのように述べる。今回のケースで責任はどうなるのだろうか。
「臭豆腐を持ち込んだり、捨てたりすると異臭騒ぎになり、電車が遅延するという事態に至ることについて、予見可能性があり違法行為といえるかどうかが問題になります。
ただ、海外で日常的に食べられている食材を捨てたにすぎないことと、電車が遅延する騒ぎまで発展するかということを考えると、一般に予見可能性まであるといえないと思います。
ですので、臭豆腐を持ち込んだこと、あるいは捨てたこと自体は、違法行為とはいえません。今回のケースは、損害賠償責任まで発生すると考えることはできないと思います」
もし仮に、客がイタズラ目的で臭豆腐を持ち込み、あえて混乱を狙って捨てたような場合はどうだろうか。
「たとえば、偶然意図しない事態が発生したということではなく、イタズラ目的で混乱させようと思って、意図的に臭気の伴う食材を放置したり、捨てた場合、違法行為として、損害賠償責任が発生することは十分考えられます。
また、故意にこのような状況を発生させた場合、威力業務妨害罪といったような刑事責任を生じることも十分考えられます。 いずれにしろ公共の場であることから注意していただければと思います」
前島弁護士はこのように話していた。