足利事件で冤罪の原因となったDNA型鑑定「MCT118型法」が、ほかの8事件でも有罪認定の証拠として使われていたことがわかった。
法務省が10月23日の衆院法務委員会で明らかにした。8事件で有罪が確定したのは計8人。この中には、すでに死刑執行された「飯塚事件」の元死刑囚も含まれているという。
一方、法務省は8事件の具体的な内容について「プライバシー」を理由に明らかにしなかった。国会では「何を隠しているんですか」と批判の声が上がった。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●冤罪生んだDNA型鑑定、1989〜2003年に141事件で実施
今年9月に放送されたNHK「未解決事件」File.19は、未解決の「北関東連続幼女誘拐殺人事件」とDNA型鑑定の問題を取り上げ、大きな反響を呼んだ。
この日の法務委員会で、口火を切ったのは有田芳生議員だった。
有田議員は、足利事件で冤罪を生んだDNA型鑑定「MCT118型法」について、「いつからいつまで捜査に使われたのか」と質問した。
警察庁の遠藤剛審議官は、1989年から2003年までの間に、科学警察研究所と都道府県警察の科学捜査研究所でこの鑑定法が使われ、全国141事件で鑑定が実施されたと説明した。
続いて、有田議員が「MCT118型法で有罪になったのは何件か」と尋ねると、法務省の佐藤淳刑事局長は次のように答えた。
「MCT118法によるDNA型鑑定の結果が、判決理由中の事実認定において証拠として用いられたことが確認できた事件で、有罪が確定した事件数および被告人の数は8件8人であった」
この8人に、足利事件で無期懲役刑が確定し、その後の再審で無罪となった菅家利和さんは含まれない。
一方、福岡で起きた「飯塚事件」で死刑判決が確定し、すでに刑が執行された久間三千年(くま・みちとし)さんは含まれるという。
●「何を隠しているんですか」8事件の詳細明かさず
有田議員が「8件というのは、どういう事件なんでしょうか?」と質問すると、佐藤局長は「MCT118法によるDNA型鑑定それ自体の信用性が否定されたものではない」としたうえで、事件の詳細を明らかにすることを拒んだ。
その理由として挙げたのが「プライバシー」だった。
「確定した有罪判決の内容は、元被告人にとって前科情報という極めてプライバシーの高い情報にあたり、個別の事件が特定されかねない内容を明らかにすることには慎重であるべきと思われることから、個別事件の具体的内容について法務当局としてお答えすることは差し控えたい」
これに対し、有田議員は食い下がった。
「被害者の名前を明らかにせよと言っているんじゃない。裁判は公開の原則。判例などでもプライバシー部分を隠して表に出すことはおこなわれている。合理的にもう少し説明していただけませんか」
しかし、佐藤局長はそれ以上の説明をしなかった。
有田議員は「何を隠しているんですか」と批判。最後に「今日は序論ですから。徹底してやりたい」と述べ、今後も追及する姿勢を示した。
國重議員(左)と法務省の佐藤刑事局長(衆議院インターネット審議中継より)
●警察は再鑑定せず…本人への通知も「必要ない」
問題となった鑑定結果について、再検証はおこなわれているのか。
弁護士でもある國重徹議員は、9月のNHKの放送について「警察庁が過去に行ってきたDNA鑑定の科学的信頼性に関わるものなので、しっかり検証していく必要がある」と指摘した。
そのうえで、MCT118法によるDNA型鑑定が有罪認定の証拠として使われた8事件について、「再鑑定、再点検をした事件はあるんでしょうか?」と質問した。
これに対し、警察庁の遠藤審議官は「それぞれ確定判決がありますので、警察として再鑑定や再点検はおこなっていない」と答弁。今後も再鑑定する予定はないとした。
國重議員は「プライバシーが問題だというのであれば、せめて検察や警察から被告人に伝える必要があると思うが、すでにお伝えしているんでしょうか?」と問いただした。
しかし、佐藤局長は通知の必要性も否定した。
「被告人や元弁護人は、確定審に提出された証拠の内容を当然把握していると考えられることなどからして、ご指摘のようなMCT118法によるDNA型鑑定が有罪立証に用いられたといった内容の通知をする必要はなく、相当でもないと考えている」