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「航空券の転売」は犯罪? SNSでは「推しの遠征」狙いの売買も JALとANAが相次ぎ注意喚起
JALによるXへのポスト

「航空券の転売」は犯罪? SNSでは「推しの遠征」狙いの売買も JALとANAが相次ぎ注意喚起

航空券の転売や譲渡は禁止ーー。日本航空(JAL)と全日空(ANA)が年末に、相次いで航空券の転売を禁止する注意喚起を発信したことが話題となりました。

航空各社がこうした注意喚起を行った背景のひとつに、SNS上で、アーティストのライブの日程などに合わせた航空券の譲渡が行われていることがあると思われます。

メルカリや楽天ラクマなどの、フリマアプリやサイトなどでは、航空券の出品が規約上禁止されています。そのため、XなどのSNS上で、直接売買するケースがあるようです。

実際、X上で「#航空券譲」のハッシュタグで検索すると、「ANA航空券探されてる方いませんか?」「女性名義1人分 往復●万でお譲り先探してます」などの投稿が見られました。

こうしたやりとりの中には、アーティストのライブなどに参加したい方を狙って、当初から転売目的で航空券を購入する人もいることが予想されます。こうした転売目的での売買は規約違反だけでなく、法的にも問題となるのか、簡単に解説します。

●正規の料金を支払っていても「詐欺罪」にあたるのか?

結論からいえば、最初から転売目的で航空会社から航空券を購入する行為は、正規の料金を支払って購入していたとしても航空会社に対する詐欺罪にあたる可能性があります。

航空券の転売について、「正規の料金を払っているのに、なぜ詐欺になるのか」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。

この点について、最高裁平成22年(2010年)7月29日決定は、国際線の航空券を他人に使わせる目的で、自分名義の搭乗券を受け取った行為につき、詐欺罪の成立を認めています。

この事件では、被告人は最初から他の者を搭乗させる意図であるのに、その意図を隠して、航空会社の搭乗業務を担当する係員に対して、乗客として自己の氏名が記載された航空券を呈示して搭乗券の交付を請求し、その交付を受けました。

最高裁は、搭乗券の交付を請求する者が航空券記載の乗客本人であることについて厳重な確認が行われていたなどの事実関係の下では、正規の料金を払っていても刑法246条1項の詐欺罪に当たると判断しました。

●なぜ「本人確認を偽ること」が詐欺にあたるのか

最高裁が詐欺罪の成立を認めた理由は、航空機の保安確保や不法入国防止のための義務履行の観点から、本人確認が航空運送事業の経営上きわめて重要であったことにあります。

航空機は事故が起きれば被害が甚大になりやすく、安全確保は航空運送事業の根幹をなす要素ですし、不法入国防止も航空会社が航空機の運営について安心・信頼できるものであるために必要不可欠といえます。

なお、我が国でも、出入国管理及び難民認定法56条の2において、航空会社等に旅券等の確認義務を課しています。

本件では、航空会社は搭乗手続に際して厳重な本人確認手続を行い、その確認がとれない者に対しては搭乗券交付を拒絶することにより、当該乗客以外の者を航空機に搭乗させない態度を明らかにしていました。

このような事情を考慮したうえで、本人以外の者が搭乗する意図を隠して搭乗券の交付を受ける行為は、「交付の判断の基礎となる重要な事項」を偽っていると評価され、詐欺罪の「欺(あざむ)く行為」にあたると判断されたのです。

●国内線での転売目的の航空券購入が詐欺罪にあたる可能性はあるのか?

この最高裁判例は国際線の事案であり、また不法入国という事情もあります。

また、最高裁判例は航空券を呈示して搭乗券の交付を求めた事案であり、「航空券自体」の購入とは少し違う状況にも思えます。

まず、国内線である点から考えてみます。

重要なのは、最高裁が「搭乗券の交付を請求する者が航空券記載の乗客本人であることについて厳重な確認が行われていた」という事実を重視している点です。

国内線の場合、国際線ほど厳重な本人確認が行われていないことも多いと思われます。たとえば、身分証明書などの提示が求められなかったり、航空券を購入した場合にQRコードが送られてきて、とくに本人であることの認証などはないケースもあるでしょう。

そのような場合には、最高裁判例と同じように「本人確認が航空運送事業の経営上きわめて重要」とまでいえるのかは微妙です。詐欺罪が成立するかどうかは、その航空会社がどの程度厳格に本人確認を重視しているかによって変わってくると考えられます。

年末にJALやANAが、本人以外の搭乗を禁じているアナウンスを出していることは、国内線での転売航空券の利用について、詐欺罪が成立する方向に認定される一つの事情にはなりそうです。

次に、航空券自体の購入段階で詐欺罪が成立する可能性はあるでしょうか。

航空券の事例ではありませんが、コンサートのチケットについて転売目的を隠して購入する行為について詐欺罪の成立を認めた裁判例はあります(神戸地判平成29年9月22日)。

●最初から転売目的ではない場合はどうなるのか

次に、最初から転売目的というわけではなく、後から事情が変わって転売するケースについて考えてみます。

たとえば、アーティストのライブで地方に行く人の場合、ライブチケットが当選するか分からない段階で、いろんな地方の航空券だけを押さえておき、当選しなかった場合には売る、ということを行うケースもあるのではないかと思われます。

このようなケースでは、航空券を購入する時点では自分が搭乗するつもりでいたわけですから、購入時点では航空会社を欺いたとはいえず、詐欺罪は成立しないと考えられます。

ただし、このような場合でも、転売された航空券の利用は航空会社の規約に違反しています。後述のように、航空券を買った側が、本人以外利用できない航空券を利用して搭乗する行為が詐欺罪となる可能性があるため、その共犯とされる可能性もあると思われます。

また、民事上の問題について、航空会社は、本人以外の者による航空券の利用を禁じており、購入者は転売者に代金を支払ったにもかかわらず搭乗できないという損害を被るリスクがあります。

そこで、購入者は転売者に対して、民法上の債務不履行責任(民法415条)や不法行為責任(民法709条)を追及できる可能性があります。

●航空券を買った側が搭乗することも詐欺罪にあたる可能性がある

転売された航空券を使って搭乗する行為についても、航空会社側の本人確認体制などの具体的な事情によっては詐欺罪が成立する可能性があると考えられます。

●航空券の転売はしない

以上みてきたように、航空券の転売行為は、様々な法的リスクを伴います。

最初から転売目的で航空券を購入するのは論外ですが、事情によりその便に乗れなくなった場合でも、払い戻しなどの正規の手続きを経るようにすべきでしょう。

転売された航空券を購入することも、搭乗できないリスクもありますし、SNSを通じた個人売買はトラブルの元にもなるため、やめるべきです。

(参考文献)
判例タイムズ1336号55頁
最高裁時の判例 2015年1月1日発行 p97〜(増田啓祐)
刑法判例百選Ⅱ各論(第7版)50事件(大塚裕史)
刑法各論[第3版] (松原芳博/2024年8月、日本評論社)

監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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