亡くなった元兵庫県議への名誉毀損の容疑で起訴されていた、政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志被告人の保釈請求が却下されたと報じられました。
神戸新聞(12月10日)の報道によると、立花被告人の弁護人が、起訴された当日である11月28日に保釈を請求したものの、12月2日に却下され、その却下決定に対する準抗告も12月8日に棄却されたそうです。
なぜ保釈が認められなかったのか、そして今後認められる可能性はあるのか。保釈の要件や仕組みについて整理します。
●保釈は原則として認められる「権利」のはずだが‥
刑事訴訟法上は、原則として、被告人側から請求があった場合、裁判所は特定の「除外事由」に該当しない限り、保釈を許可「しなければならない」としています。つまり、保釈は許可されるのが原則です(同法89条、「権利保釈」といいます)。
この除外事由には、死刑や無期懲役、短期1年以上の拘禁刑にあたる罪(※つまり重い罪)を犯した場合(1号)や、氏名や住居が不明な場合(6号)などが挙げられます。
今回の名誉毀損罪は1号にはあたりません。また、報道されている事情などからすると、2号や3号、6号にもあたらないと思われますが、立花氏は保釈が認められませんでした。
したがって、同条4号の「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」や、5号の、被害者などの事件に必要な知識を持っている者やその親族等に害を加えたり畏怖させる行為をすると疑われる相当な理由、があったと判断されたと考えられます。
名誉毀損事件では、関係者の証言が重要な証拠となることが多いため、裁判所は、被告人が社会的な発信力や影響力を持っていること、あるいはこれまでの言動などを考慮し、今保釈を認めると、関係者に接触して口裏合わせを迫ったり、圧力をかけたりする具体的な危険性が高いと判断したと考えられます。
ただ、現時点では立花氏は名誉毀損の事実については争わない方針と報じられています。これを前提にすると、裁判所が具体的にどんな証拠隠滅などのリスクがあると判断したのかは分かりません。
●裁判所が証拠隠滅などのリスクを重くみた可能性
権利保釈が認められない場合でも、裁判所は職権で「裁量保釈」(同法90条)を認めることができます。
これは、逃亡や証拠隠滅の恐れと、被告人が拘束され続けることによる不利益(身体的・経済的・社会的なダメージなど)を天秤にかけて判断するものですが、今回の決定を見る限り、裁量保釈との関係でも、逃亡や証拠隠滅等のリスクの方が重く見られたということになります。
●保釈請求は何度でもできるが‥
保釈請求には特に回数制限などはないため、弁護側は今後も繰り返し請求を行うことができます。ただし、事情が変わらなければ裁判所の判断も覆らないのが通常であるため、保釈に有利な新しい事情が必要です。
最も効果的なのは被害者との「示談成立」ですが、今回は被害者の遺族から示談交渉を拒否されていると報じられており、現時点では困難と考えられます。
他に考えられるのは、信頼できる身元引受人による監督を誓約したり、逃亡や証拠隠滅が物理的に不可能であることを示すため、GPS(位置情報端末)の装着を条件として提案するなどの弁護活動が考えられます。
なお、GPS装着についての改正刑訴法の施行はまだですが、実務上GPS装着を条件とした保釈について裁判官と弁護人の間で協議が行われることはあります。
また、裁判手続きが進むことも要素の1つになりえます。公判が開かれて手続が進んだ段階、たとえば罪状認否が終わったとか、証拠調べ請求が終わったとか、証人尋問が終わった、など、具体的な手続が進めば進むほど、被告人が証拠に手を加える危険性が減っていくことになります。そのため、罪証隠滅の恐れが薄れたとして保釈が許可される可能性は高まります。
●保釈保証金の納付が必要
保釈が認められる際には、逃亡防止等の担保として「保釈保証金」を納める必要があります(同法94条)。
一般的な相場は1つの事件について150万〜200万円程度と考えられますが、金額は被告人の資産状況や事件の性質によってまちまちです。このお金は、逃亡や証拠隠滅をせずに裁判を終えれば、判決後に返還されます。
監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)