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女性被疑者へのわいせつ発覚→留置施設を県内1カ所に集約 福島県弁護士会が「本末転倒」と批判
福島県弁護士会のHP

女性被疑者へのわいせつ発覚→留置施設を県内1カ所に集約 福島県弁護士会が「本末転倒」と批判

福島県弁護士会は6月2日、県内の女性被疑者・被告人を郡山北警察署の留置施設1か所に集約する運用の撤回を求める決議を発表した。弁護活動への制約や家族面会の困難を理由に、勾留場所の適正配置と刑事施設の利用を求めている。

背景には、2022年に全国で留置担当官による女性被疑者へのわいせつ行為が相次いで発覚したことがある。これを受けて福島県警は段階的に女性用留置施設を集約し、2024年3月から郡山北警察署を女性専用留置施設として県内唯一の女性勾留場所とした。しかし同会は事前協議なく一方的に開始されたとして問題視している。

●「移動時間に片道1時間以上費やすこととなり、接見に要する時間が大幅に増加」

決議では、県内各支部から郡山北警察署までの片道距離が46〜106キロに及び、「郡山支部以外の弁護人のほとんどが、移動時間に片道1時間以上費やすこととなり、女性の被疑者等の接見に要する時間が大幅に増加した」と指摘。同会が実施したアンケートでは、回答した47名の会員のうち43名が集約化に反対し、賛成者はゼロだった。

面会室が1室しかないため弁護士の接見が競合し、「1時間以上待たされた会員や接見を断念した会員がいた」という実態も明らかになった。ホームレス被疑者の環境調整が困難となり再犯に至ったケースや、外国人事件で通訳人との日程調整が困難になった事例も報告されている。

●「貧困により身体拘束された家族と面会ができない事態が発生」

家族の面会についても深刻な影響が出ている。

決議は「長時間かけて長距離移動してきたのに、取調べなどのために会えなかった場合の負担が大きい。生活保護受給者の場合は経済的な面から接見が制限されてしまう」との声を紹介。

「貧困により旅費が捻出できないことを理由として身体拘束された家族と面会ができないという事態は避けられるべき」としながら、実際にそうした事態が発生していると警鐘を鳴らした。

同会は性犯罪防止を理由とする集約化について、「留置担当官に対する指導教育体制の確立強化、適切な予算と人員確保と配置、職員に対する監視体制の強化等といった女性の被疑者等に不利益を課さない手段を取ることにより対応すべき」と批判。

「女性の被疑者等の性被害を防止するために、女性の被疑者等に対して不利益を課すことは本末転倒」と述べ、平等原則に反するとの見解を示している。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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