栃木県栃木市でアメリカンピットブルテリア2匹が逃げ出したと栃木県警が6月9日に発表した。飼い主の男性が届け出た。「世界最強の闘犬」とも呼ばれる犬種で、見つけてもむやみに近づかず通報してほしいと警察が呼びかけている。
読売新聞などの報道によれば、犬はそれぞれ黒い首輪と黄色の首輪をつけており、いずれも茶色で体長約70センチ。
男性の説明では、8日午後8時半ころ、男性が藤岡渡良瀬運動公園近くをドライブ中に、後部座席に乗せていた犬2匹が窓から逃げた。犬が車の電動スイッチに触れて窓が開いたという。
もしも逃走中の犬が人を噛んでケガをさせた場合、飼い主には法的責任が生じることもある。ペットとのドライブでも安全上の配慮が必要だ。ペットをめぐる法律に詳しい石井一旭弁護士に聞いた。
●ピットブルが人を噛めば刑事罰もありえる
——犬が人にケガをさせるとどのような責任を問われるでしょうか
犬が電動スイッチに触れたことで窓が開き、窓から逃げたと報じられていることを前提とすると、飼い主に過失があると考えられます。
逃走した末に他人を噛んで怪我をさせたり、何らかの物品を破損させたりした場合、飼い主は、犬の管理が不十分だったとして、民法718条1項 により、損害賠償を負担する可能性があります。
この条文では「動物の種類及び性質に従い相当の注意を持ってその管理をしたとき」の免責規定がありますが、そもそもこの免責が認められることは稀ですし、本件では窓が犬でも開けられる状態にしていたことで飼い主の責任は免れないと思われます。
刑事でも、事情によっては過失傷害罪(刑法209条1項)に問われる可能性があるでしょう。
——犬とドライブする飼い主はどのようなことに注意すべきでしょうか
飼い主のドライブに同伴して、車窓から首を出している犬をよく見かけます。犬もとても気持ちよさそうですし、飼い主もそんな犬の様子を見て楽しい気分になることでしょう。
しかし、窓から首を出させることは道路交通に危険を生じさせる行為として、多くの公安委員会が禁止しています。例えば東京都では道路交通法76条4項7号を受けた東京都道路交通規則17条4号が「みだりに…車両等の中から身体若しくは物件を出すこと」を禁じております。
私の事務所がある京都府でも「交通の危険または妨害となるような方法で、自動車…から身体または物を突き出すこと」が禁じられています(京都府道路交通規則13条8号)。違反者には5万円以下の罰金が科されます(道交法120条1項10号)。
窓を開けていると、今回のケースのように犬が突然飛び出すこともありえますし、その場合ペットが負傷する可能性もあります。ペット同伴のドライブの際は、クレート(キャリー)やケージなどに入れる、シートベルト付きのハーネスを使用するなど、安全性に配慮した十分な処置をとるようにしましょう。