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男子トイレでガン見被害 「わざわざ移動して見られた!」法的には?
写真はイメージ(あやちゃん / PIXTA)

男子トイレでガン見被害 「わざわざ移動して見られた!」法的には?

トイレは誰にとっても安心できる空間であってほしいもの。渋谷区の公衆トイレの建て替えで女性専用が共用になったり、歌舞伎町タワーのジェンダーレストイレが安全上の不安から批判されるなど、公共のトイレ事情をめぐる話題が最近目立つ。

では、男性トイレを使う男性は安心かというと、必ずしもそうではないようだ。ある男性は駅の男性トイレで嫌な思いをしたという。

●「お隣さん」の視線が注がれた先には…

会社員の山川太郎さん(30代)は、平日の昼過ぎ、地下鉄の駅トイレに飛び込んだ。

官公庁が密集する都心の駅には昼夜問わず、多くの人が行き交っている。しかし、このときは4つの小便器を誰も使っていない。奥から2番目を選んだ。仕事の前に間に合ってよかった。安堵のひと息をついていると、右隣に男性がいつの間にかやってきた。

画像タイトル イメージ(y.u-stable / PIXTA)

普段なら特に気に止めないが、わざわざ真隣を選ぶ「トナラー」は好きではない。どんな人がきたのだろう。顔を確かめてみてギョッとした。

彼が見開いた目線の先は明らかに太郎さんの身体の下のほうに注がれていたからだ。

警戒感はさらに高まった。彼は一度選んだ小便器を離れ、今度は太郎さんの左隣に移動したのだ。

4つの小便器はいずれも清掃に問題はなかった。とりたてて離れる理由はない。

完全に不審者と認識した彼の顔に目をやると、今度も太郎さんの下腹部を凝視している。

不快感と恐怖感から早々に用を切り上げ、逃げるように手洗い場に向かった太郎さんだが、手を洗ってからトイレを「脱出する」まで、彼の目は太郎さんのことを見つめていた。年齢は40代くらいだろうか。

トイレから出た太郎さんは「もしかしたら彼はトイレの個室に潜んでいて、狙った男性が入ってきたらロックオンしているのではないだろうか…」という考えを頭によぎらせた。

予定時間は迫っている。その予感を確認することはできないまま、気持ちの悪さとモヤモヤした思いを抱えてその場を後にした。

●ことさらにのぞき込むと罪に問われることもありえる

迷惑行為にくわしい奥村徹弁護士は「このような行為は罪に問われる可能性もある」と指摘する。

画像タイトル イメージ(Ushico / PIXTA)

「用便中の姿態をのぞき込む行為は、いわゆる迷惑防止条例の『卑わい行為』として処罰される可能性があります。

たとえば大阪府の迷惑防止条例では『人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で』という要件があるので、視野に入っただけでは足りず、ことさらにのぞき込むくらいの行為が該当すると思います。

これに違反した場合は、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。

さらに、トイレですから、用便などの目的もなく、もっぱらのぞき行為のためにトイレ内に入った場合は、建造物侵入罪を疑われることがあります」(奥村弁護士)

●男子トイレで見られることって「気になる?」

帰社した太郎さんが「こんなことがあったんだけど」と打ち明けたところ、同僚の男性たちは「便器までの距離が長い人がいると、たまに目に入ってしまう」「人のは見ようとも思わないし、見られていると特段気になった覚えもないです」などと口にした。

気にするほうがおかしいのだろうか。でも、あのとき感じたのは間違いなく不快感だった。なんとなく気分の晴れない思いをしながら、自宅に帰るのだった。

プロフィール

奥村 徹
奥村 徹(おくむら とおる)弁護士 奥村&田中法律事務所
大阪弁護士会。大阪弁護士会刑事弁護委員。日本刑法学会、法とコンピューター学会、情報ネットワーク法学会、安心ネットづくり促進協議会特別会員。

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