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寮の洗濯機に「カレーやサバ缶」「大量の納豆」入れられる被害、「犯人」が問われる罪は?
寮の洗濯機(H.Kuwagaki / PIXTA)、サバ缶・カレー・納豆(いらすとや)

寮の洗濯機に「カレーやサバ缶」「大量の納豆」入れられる被害、「犯人」が問われる罪は?

寮にある共用の洗濯機に食べ物を入れられる被害があったという相談が、弁護士ドットコムに寄せられている。これまで被害は2度も生じているそうだ。

相談者によると、1度目はカレー・サバ缶、2度目は大量の納豆が入っていたという。1度目は誤って入れた可能性があったが、間を空けずに2度目があったので、「わざと入れているのかと思われる」

洗濯機の洗浄費がかかるだけでなく、洗濯機を使いたくない寮生も出てくるのではないかと不安があるようだ。

そのため、寮では監視カメラを設置するなどの対策を検討しているといい、汚した相手を「訴えることは可能ですか?」と質問している。

サバ缶や納豆を洗濯機に入れる行為にはどのような法的問題があるのだろうか。吉田要介弁護士に聞いた。

●器物損壊罪に問える可能性「犯行の映像があるのが好ましい」

——カレー・サバ缶の中身、納豆などを寮の洗濯機に大量投入された場合、どのような罪に問われるでしょうか

他人の物を故意に(わざと)損壊した場合は、器物損壊罪(刑法261条)が成立し、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは過料に処せられます。

「損壊」には、物理的に壊すことだけでなく、その物の効用を害する一切の行為が含まれます。

カレー・サバ缶や納豆を大量に洗濯機に入れれば、汚れや匂いも気になり、洗濯機の洗浄などの対応が必要であることから、他人の洗濯機の効用を害する行為といえ、損壊したとして、器物損壊罪が成立すると思われます。

ただし、器物損壊罪は、故意犯です。

今回のケースのような、カレー・サバ缶や納豆を誤って洗濯機に入れてしまうということは通常考えられませんが、何らかの食品等をポケットに入れたまま誤って洗濯機に入れてしまった場合などは、洗濯機の洗浄が必要になったとしても、刑事上の器物損壊罪は成立しません。

ですので、誤って入れたという弁解を防ぐためにも、防犯カメラ映像で、犯人が洗濯機に食品を入れている証拠があったほうが、罪に問いやすいと思われます。

——民事上の責任も追及できるでしょうか

カレー・サバ缶や納豆を大量に洗濯機に入れれば、洗濯機の洗浄などの対応が必要になる以上、それらの費用を賠償する責任(不法行為責任)を負います。

刑事と異なり、故意(わざと)ではなく、誤って入れてしまった場合も責任を負います。したがって、洗濯機の持ち主は、カレー・サバ缶や納豆を大量に洗濯機に入れた者に対して、洗浄など費用を損害賠償請求できます。

プロフィール

吉田 要介
吉田 要介(よしだ ようすけ)弁護士 ときわ綜合法律事務所
千葉県弁護士会所属。日弁連子どもの権利委員会事務局次長、千葉県弁護士会刑事弁護センター委員。法律を「知らないこと」で不利益を被る人を少しでも減らすべく、刑事事件、少年事件、家事事件、一般民事事件等幅広く手がけ、活動している。

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