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女子大生死体遺棄事件「わたしも死に方聞きました」 直接会った別の女性が証言する容疑者の実像
札幌女子大生遺棄事件の容疑者と会ったことがあるという女性(提供)

女子大生死体遺棄事件「わたしも死に方聞きました」 直接会った別の女性が証言する容疑者の実像

北海道札幌市東区のアパートで、女子大生(22)の遺体が見つかり、この部屋に住む無職の男性(53)が死体遺棄の疑いで逮捕された事件。容疑者は複数の女性にツイッターで声をかけており、女子大生とは何度も会っていたとされる。ツイッターがきっかけで容疑者と会ったことのある女性に話を聞いた。(ライター・渋井哲也)

●接点はツイッターだった

女子大生のものと思われるツイッターのアカウントが、容疑者のものとみられているアカウントに対して、「いきなりリプ申し訳ありません。依頼ってどんな内容のことですか?詳しく聞いてみたいです。DMあけてるのでよろしくお願いします」と送っている。

容疑者は何度か、死を匂わせることと「依頼」という文言をツイートしている。ここからやりとりが始まったのかもしれない。

それまでも容疑者はツイッターで複数の女性とやりとりしていた。ツイッターで話しかけたり、DMを送るだけの人もいた。ミナコさん(仮名・30)も、ツイッターのやりとりを通じて容疑者と会った女性の1人だ。

「3〜4年前、容疑者のアカウントから声をかけられました。当時、私のアカウントでは『逃げたい』とか、仕事の悩みとか、日常の弱音を吐いていました。通報されると思っていたので、『死にたい』とはつぶやいてはいません。初めは、向こうから連絡がありました。娘さんがいて、私と同じ誕生日だと言っていたのです。それに私の親とも同じ年代だったし、同じような精神疾患を持っていたので、仲良くなっていきました」

容疑者はツイッターで「#(ハッシュタグ)」をつけて、同じ精神疾患の人とつながる言葉を付け加えていた。

たとえば、「#うつ病」「#死にたい人とつながりたい」「#希死念慮」「#天涯孤独」「#社不」(社会不適合者を略したネットスラング)「#絶望感」「#人間不信」などの言葉だ。

「最初は、病友(やみとも)といった感じでした。ツイッターのDMでの会話はほとんどなく、すぐにLINEでのやりとりになったと思います。毎日ということではないですが、しばらくやりとりが続きました。

半年経って、『ご飯に行こう』とか『会おう』という話になりました。それまでツイッターを介して誰かに会ったことはなかったのですが、会ってもいいと思ったのは、LINEのやりとりで、『この人は信用できる』と思ったからです。でも、2日間ぐらいは考えましたよ」

●ナイフを見せられてドン引きした

待ち合わせ場所は、札幌市営地下鉄東豊線の豊水すすきの駅。時間帯は日中だった。

「お互い病気を持っているので、分かち合いたいと思ったんです。それに同じ市内在住だったので、距離も遠くないですから。ただ、日中に会ったのは私の希望です。いくら信用できると思っても、夜に会ったら危ないと思ったので」

しかし、ミナコさんが容疑者と会ったのは10分ほど。早く別れたのはなぜだったのか。

「会ってすぐに、『実はさ、ナイフ持っているんだよね』と言って、ナイフを見せてきたんです。私は『いやいやいや。だめでしょ? それって銃刀法違反じゃないですか?』と聞きました。すると、『そうなんだけどさ。俺、捕まったことないから』『俺、2人くらい殺しているし』と言ったんです。傭兵時代のことかと思って聞くと、それとは別に『2人、殺めた』と言っていました。ドン引きしました。

彼がそんな話をしたのはカッコつけたかったのではないでしょうか。私から見ると、あの人は、ナイフとか、人を殺したってことを自慢したがっていると思いました。もともと、何かあったらすぐに帰れるように具合が悪いふりをしながら会ったんですが、ナイフを見て余計に帰りたくなりました。そのため『気分が悪いから』と言って別れました。もし、会う前にナイフを持っていると知っていたら、会わなかったと思います。無理です。怖いですから」

ミナコさんはランチもせずに帰宅した。しかし、ツイッターのフォロー・フォロワー関係は続いた。ちなみに、最近の報道によると、女子大生のほかに2人を殺したというツイートは「嘘」と供述しているということだが、その真偽は捜査中だ。

「娘さんと誕生日が同じということなので、惰性でつながっていました。ただ、自分の希死念慮が強まったときに、LINEで通話したことがありました」

●毒親家庭で育ち「希死念慮」を持つように

ミナコさんの両親は毒親だった。幼いころ、父親から顔に汚物をつけられたことを覚えている。両親が離婚して、母親と一緒に暮らすが、「父親に似ている」と言われ、暴力を振るわれた。「産まなければよかった」と言われたこともあった。

また、小学校高学年のときにいじめに遭い、友人から「手首を切ると落ち着く」と教えられて、リストカットをするようになった。中学2年のときもいじめに遭い、自宅で首を吊って死のうとした。このことで地元のニュースに取り上げられたこともあった。

以来、希死念慮は今も消えない。そして、2年前、母親から縁を切られた直後、容疑者とふたたびLINEで連絡をとった。

ミナコさん「どうすれば楽に死ねたりする?」 容疑者「睡眠薬で眠らせて、殺してあげようか?…なんてね」

「私は、要らない人間なんだなと思ったんです。そのとき、ナイフを持っていた容疑者のことが頭に浮かびました。『あの人だったらやってくれるかな?』と思った瞬間があったんです。そのときは、殺してほしいというよりは、自殺したかったんです。だから、『いや、それはいいわ』と言い、それ以上は聞かなかったですね。他人からの痛みを感じるのは嫌だったんで」

●「死にたい」とつぶやく人に寄り添ってあげたい

その後も何度かLINEで通話したが、容疑者はどんな話をしていたのか。

「日常会話が多かったですね。ただ、容疑者は『俺は、ダメ人間だ』とマイナスなことばかり言っていました。私は『別にそんなことないよ』と受け流していました。『人を殺したことがあると聞いたことが頭にあったし、『2人』というのが、妙にリアルだったので、関わりたくなかったんです」

スマホの機種を変えたことで、今はもうLINE通話の形跡はない。新機種にしたときに追加したときのやりとりのみだ。

「私はツイッター依存だったので、容疑者のツイートもチェックしていたほうでした。ただ。今回の事件に関連した内容はたまたま見ていませんでした。逮捕後に知り、『こんなこと書いていたんだ。馬鹿だな』と思いました。ニュースを見て、『やっぱりやったのか』と思いました。もし、自分も気を許していれば、殺されていた可能性もあると思っています」

今回の事件が起きて、何か心境の変化はあったのだろうか。

「今は、『死にたい』とつぶやく人とつながりたいです。言葉や文章で、寄り添ってあげたいと思っています。事件が起きるまでは『死にたい人は死ねばいい』と思っていたんです。でも、もう死ぬのは見たくない」

●生きづらさを感じている方々へ(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/r2_shukan_message.html

●相談窓口(いのち支える自殺対策推進センター)

https://jscp.or.jp/soudan/index.html

●日本いのちの電話連盟

https://www.inochinodenwa.org/

●SNS相談を行っている団体一覧(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/soudan_sns.html

●10代のための相談窓口・ミークス

https://me-x.jp

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