経営する弁護士事務所に所属していた男性弁護士からパワハラ被害を訴えられた裁判で虚偽の証拠を提出したとして、有印私文書偽造・行使などの罪に問われた古澤眞尋被告人(57)=弁護士業務は停止中=の初公判が10月13日、横浜地裁であった。
古澤被告人は文書偽造については「全て間違いございません」と述べたが、関係者にうその陳述をさせたとされる偽証教唆については弁護側が一部否認、執行猶予を求めた。
刑務官2人と共に入廷した古澤被告人は、検察官に向かって軽く会釈。人定質問で職業を問われると「今は行政書士をしております」と丁寧に述べた。資料に熱心に目を通し、退廷時に裁判官に深く一礼するなど、終始落ち着いた様子だった。
●民事訴訟はパワハラを認定、その後和解
問題の書類が出された民事訴訟は2016年、古澤被告人が経営する川崎市の事務所に所属していた30代の男性弁護士が慰謝料などを求めていた。古澤被告人の代理人弁護士は複数回にわたって交代している。
一審横浜地裁川崎支部は2021年4月、被告人が2013〜16年に男性の胸ぐらをつかんでロッカーにたたきつけたり、メールの宛先を蔑称にしたりした行為をパワハラと認定、慰謝料など計約500万円の支払いを命じた。双方が控訴し、今年2月に和解している。
●通帳履歴を書き換え、印鑑を新たに作成
古澤被告人は妻と共謀し、パワハラ訴訟を自分にとって有利に進めようと、銀行通帳の取引履歴やメール文書などを偽造し、真正な証拠のように提出したなどとされる。
検察側の冒頭陳述などによると、偽造証拠とされたのは▽依頼者との間での通帳の取引履歴▽A弁護士の印章入りの督促通知書▽B弁護士が書いたとする中傷メールの3点。自宅や事務所のパソコンで、PDFファイルの編集ソフトなどで書き換えを重ねたという。
いずれもパワハラを訴えた男性弁護士が仕事で失敗し評判が悪かったと主張するための証拠として、裁判に提出。自身の代理人を務めた複数の弁護士も見抜けず、付き合いのある業者など多くの関係者が巻き込まれていた。
A弁護士の通知書は、印影から類似の印鑑をつくるよう業者に依頼・作成して押印。また、B弁護士のメール文書は、面談した際に一時退席している間に「メールが自分のものだ」と署名した書類に押印されていたという。
古澤被告人は、神奈川県弁護士会によって2021年6月29日に退会命令の懲戒処分を出され、審査請求。日弁連が今年5月17日付で業務停止2年に変更する裁決をした約1週間後の5月25日に横浜地検に逮捕された。