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甲子園球場で「チアリーダー」を盗撮したら罪に問われる?
画像はイメージです(elise / PIXTA)

甲子園球場で「チアリーダー」を盗撮したら罪に問われる?

全国高校野球選手権大会が8月6日から開幕した。甲子園球場の観衆をわかすのは、球児のプレーだが、チアリーダーの応援姿にもドラマがある。しかし、そのチアリーダーたちの衣装を見直すべきだという声があらわれている。スマホの普及とともに、チアリーダーの「盗撮被害」が増えていることが背景にあるようだ。そもそも盗撮は罪に問われないのだろうか。河西邦剛弁護士に聞いた。

●チアリーダーの盗撮、犯罪成立しうる

日本の法律には「盗撮罪」はなく、各都道府県の迷惑防止条例が「盗撮」を犯罪として規制しています。

甲子園球場のある兵庫県の場合、「通常衣服で隠されている下着又は身体」を撮影した場合に犯罪になります。たとえば、駅のエスカレーターでスマホを使ってスカート内を撮影するというのが最も多い類型です。

チアリーダーについても、スカート内は通常衣服で隠れている場所と言えるでしょうから、スカート内を撮影した場合には条例違反の犯罪となり、兵庫県の場合であれば6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金となります。

駅での盗撮は、スイカやパスモなど、入場記録や防犯カメラから犯人特定ができますが、球場だと犯人特定の証拠が残りずらく、その場で確保しないと後日逮捕するのは困難です。それゆえ怪しい現場を見つければ110番通報して、すぐに警察官に駆け付けてもらうのがベストではあります。

現行犯逮捕は、警察官でない民間人でもできますので、盗撮をしている明らかな状況があれば、私人でも盗撮容疑者の身体拘束は可能です。その場合には、ただちに110番通報して警察に引き渡すことが必要になります。

過去の事件でも盗撮が見つかった人物は、必死でデータを削除しようとするので、スマホや電子機器の操作をさせないことが現場対応で重要になります。

また、各都道府県の迷惑防止条例は「卑わいな言動」についても犯罪としており、最高裁も一定の場合には衣服の上からの撮影でも「卑わいな言動」に該当するとした判例もあります。

しかし、現在の警察の運用をみていると、通常衣服で隠れている場所の撮影か否かを事件として立件するか否かの線引きにしている傾向があるようです。

●衣装やユニフォームを見直すべきという声について

学校側とチア部員との双方で話し合い、選択の自由を増やすことが重要です。部員の中には今まで通りの衣装がいいという生徒もいるでしょうし、逆に露出を抑えたいという部員もいるでしょう。同時にユニフォームである以上は、一定の統一性が必要になります。

ある程度統一感を維持しながら複数の衣装選択を学校側が用意すること、たとえばレギンス使用の有無は各部員が選択できるというのは一つの選択かと思います。

●根本的な解決のために

ここ十数年でスマホが普及し、あらゆる場面で盗撮被害が激増しました。球場も例外ではありませんが、法律や条例含め盗撮被害への対応が追い付いていないのが現状です。東京都でも2018年に条例改正が施行されて、盗撮の処罰範囲が拡大しましたが、現在でもアスリート盗撮の問題などが残っています。

球場でのチア盗撮対策として考えられるのが、球場が施設管理権に基づき、観客による撮影は原則禁止としてしまうこと。そうすると許可なく撮影行為をしている人物がより浮き上がりますから規制しやすくはなります。しかし、保護者や学校関係者含め記念撮影も規制されて不都合が生じるので、小さな球場ならまだしも甲子園球場でこれは現実的ではないでしょう。

ほかには、学校関係者や保護者が撮影する場合には、各学校が用意した腕章などを付けるという方法です。これをすると腕章がない人の撮影について牽制する効果があると思われます。何より怪しい人物が近寄りにくい環境をつくることが現実的な対策だと思われます。

痴漢を始めとするほかの性被害と異なり、盗撮は、知らず知らずのうちに被害者になってしまう、しかも画像や映像が流出する二次被害やデジタルタトゥーにも繋がる危険性があるのが特徴です。

主催者や施設管理者、さらには学校や保護者が主体的に生徒を性被害から守る動きをすることが必要かと思います。

プロフィール

河西 邦剛
河西 邦剛(かさい くにたか)弁護士 レイ法律事務所
「レイ法律事務所」、芸能・エンターテイメント分野の統括パートナー。多数の芸能トラブル案件を扱うとともに著作権、商標権等の知的財産分野に詳しい。日本エンターテイナーライツ協会(ERA)共同代表理事。「清く楽しく美しい推し活 ~推しから愛される術(東京法令出版)」著者。

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