配達に訪れた家で高級腕時計などを盗んだとして、福岡県警が配送員の男を逮捕した。男は盗んだものを質店で換金したほか、妻にプレゼントとして渡していたという。テレビ西日本などの報道によれば、妻には「お得意先からもらった」と言って渡していたという。
今回の事件で、妻はプレゼントが盗品だったことは知らなかった模様だ。しかし、妻もまた罪に問われる可能性はないのか。また、犯罪で得たプレゼントを返す義務はあるのだろうか。西口竜司弁護士に聞いた。
●「盗んだものと知らなければ、犯罪は成立しない」
「いやはや油断も隙もない事件ですね。
まず、夫には窃盗罪(刑法第235条)が成立することになります。妻が(夫が)盗んだものであることを知らなかった場合、妻には故意がないので犯罪は成立しないことになります」
では、妻が盗んだものであることを知っていたような場合には、どうなるのか。
「その場合、妻が夫から受け取る行為は盗品等無償譲受罪(刑法第256条1項)にあたることになりそうです。
ただし、刑法257条には配偶者との間で盗品等無償譲受罪を犯した場合、その刑を免除すると規定しております。
したがいまして、妻が盗んだものであることを知っていた場合であっても犯罪は成立しますが、刑を免除されることになるのです」
●「持ち主から妻に対して返還請求」する可能性
では今回の事件では、妻が返却する必要はないのですね。
「いえ、そうではありません。民事上の返還請求権を免れるものではありません。所有権自体は配達先のものなのですから、持ち主から妻に対し返還請求をすることはできます。知らなかった場合も同様になってきます。
いずれにせよ、妻を騙した夫の責任は重いですね」