最近、相次ぐ警察の誤認逮捕。特に、大阪府警で立て続けに誤認逮捕が発覚し、大きなニュースとなっている。このようなことはあってはならないことだが、もし万が一、無実の罪で逮捕されてしまったら、どんな「補償」があるのだろうか。
大阪府警北堺署が窃盗事件で会社員男性を誤認逮捕したケースでは、国から計106万2500円の刑事補償金が支払われるという。
●誤認逮捕で「85日間」も警察に拘束された
報道によると、男性は4月、ガソリンスタンドの給油カードを盗んだ容疑で逮捕された。この容疑については結局、不起訴となったが、その給油カードを使ってガソリンを盗んだ容疑で再逮捕され、6月に起訴された。ところが7月に誤認逮捕であることが発覚し、裁判は途中で打ち切り(公訴棄却)となり、男性は釈放された。身柄を拘束された期間は、85日間に及んだ。
今回は、法律にもとづいて男性に補償金が支払われる。その金額は、最初の逮捕から不起訴まで(4月24日~5月15日)の22日間については、法務省の「被疑者補償規程」にもとづいて、27万5000円。また、再逮捕翌日から釈放まで(5月16日~7月17日)の63日間については、「刑事補償法」にもとづき、78万7500円が刑事補償金として支払われるという。
この金額は、1日あたり1万2500円の補償金額に身柄拘束された日数(22日+63日=85日)をかけあわせたものだが、補償額はどんな基準で決まるのだろうか。また、誤認逮捕のせいで契約がパーになったり、仕事が打ち切られたりといった損害が出た場合、別に何らかの補償が受けられるのだろうか。
●補償額は1日あたり「1000円~1万2500円」
「被疑者補償規程と刑事補償法のいずれも、補償額は1日あたり1000円~1万2500円と決まっています」
このように説明するのは、元検事で刑事事件にくわしい山田直子弁護士だ。
「両制度とも、補償額の算定基準については、次の点を考慮すべきことが規定されています。
(1)拘束の種類およびその期間の長短
(2)本人が受けた財産上の損失
(3)得るはずであった利益の喪失
(4)精神上の苦痛その他一切の事情」
たとえば「契約がパーになった損害」も、これらに含まれるのだろうか?
「『契約がパーになった』とは、ここでいう『得るはずであった利益』にあたるものと思われますが、それら一切の事情を含めて補償額を算定するというのが、法の建前です。
冤罪事件として有名な『足利事件』も含め、最近では、法の上限額で補償されるケースが多いようです」
●刑事補償制度は、捜査が「適法」であることを前提にしている
この金額がすべてなのだろうか? 間違って逮捕や起訴をされれば、1日あたり1万2500円では済まない大損害を受けるケースも少なくなさそうだが……。
「これらの制度は、実際に生じた損害すべてを補填するという趣旨ではありません。
あくまで《公権力の行使は適法だったが、結果としてその人に嫌疑がなかったり、無罪となったことが判明した》という前提に基づいた、『補償』の制度なのです」
山田弁護士はこう説明する。
ということは、もし不適切な捜査で逮捕されたとすれば、他に手段があるのだろうか。
「もし違法な公権力行使によって被害を受けた場合には、国家賠償法に基づいて、民事手続で損害賠償を求めることもできるでしょう」
つまり、国家賠償法の対象となるような違法行為等があった場合なら、発生した様々な損害を賠償するよう、国を訴えることが可能なようだ。もちろん、万が一にも、そんな事態に陥りたくはないものだが……。