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「無期懲役でも15年くらいで仮釈放」テレビでの大渕愛子弁護士の発言は正しいか?
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「無期懲役でも15年くらいで仮釈放」テレビでの大渕愛子弁護士の発言は正しいか?

「無期懲役なら『15年くらい』で仮釈放になる」。テレビ番組で、ある弁護士が発した言葉がネットで話題になっている。問題の番組は、6月13日に放送された関西ローカルの情報番組「教えて!ニュースライブ 正義のミカタ」(朝日放送)。番組のコメンテーターである大渕愛子弁護士の発言が「事実に反する」などとして、ネット上で批判を受けているのだ。

●テレビ番組出演者が「無期懲役なら15年で仮釈放になる」と発言

番組では、千葉県柏市で2014年3月に起きた「連続通り魔事件」の裁判員裁判の判決が取り上げられた。

2人が死傷したこの事件で、千葉地裁は6月12日、強盗殺人に問われた男性被告人に対して、無期懲役の判決を下した。判決直後、被告人は法廷で拍手をして、「これでまた殺人ができる」などと悪態をついたという。

この判決の紹介を受けて、番組の出演者の薬丸裕英さんが「無期懲役ということは、だいたい15年くらいで仮釈放になるわけですよね。こわいですよね」と発言。そこで、司会の東野幸治さんがコメンテーターとして出演していた大渕愛子弁護士に「15年ですか?」と話題をふった。

すると、大渕弁護士は「そうですね」と回答。さらに、「刑務所で問題なく過ごせば、15年くらいで仮釈放になって、その後、問題なければそのまま社会で生活してしまうんですけども。ここまで『将来殺人ができる』と言っているんですから、慎重に刑務所のほうも見て、仮釈放は認められないと思いますけどね」と真面目な顔つきで話したのだ。

ところが、この「無期懲役なら15年くらいに仮釈放になる」というコメントについて、「事実に反する」「きっちり訂正してほしい」という批判の声があがっている。大渕弁護士の発言は正しいのか。刑事事件にくわしい櫻井光政弁護士に話を聞いた。

●仮釈放までの平均期間は「15年」ではない?

「『無期懲役なら15年くらいで仮釈放になる』というのは誤りです。まず、あり得ません」

櫻井弁護士はズバリ述べる。どうして、そういえるのだろうか。

「法務省の統計によると、2004年から2013年までの10年間で、無期刑の受刑者のうち、新たに仮釈放された人は49名です。その平均受刑在所期間は30年を超えています。

例外的に、「15年」で仮釈放になる人がいるのではないだろうか。

「少なくとも、2004年から2013年までの10年間で、在所期間20年以内に仮釈放が認められたのは、2004年に70歳の受刑者が『19年11カ月』で認められたのが唯一のケースですね」

無期懲役の仮釈放は、どのような運用がされているのだろうか。

「仮釈放は、刑務所長から地方更生保護委員会への申し出により、審理が開始されます。有期刑の上限が30年ですから、無期刑の場合、刑務所長が地方更生保護委員会に仮釈放の申し出をする時期は、30年の経過が目安になるでしょう。

また、法務省の通達(2009年)で、刑期30年が経過した後は、申し出がなくとも、それから1年以内に、地方厚生保護委員会が独自に審理を開始することになりました。

仮釈放を許すか否かの審理にあたっては、本人との面談や被害者等の意見聴取もなされますから、十分に更生していなかったり、犯情の悪い人は仮釈放が許されない可能性が高いです」

どうやら、そう簡単に仮釈放されるというわけではなさそうだ。

「法務省の統計によると、2004年から2013年までの10年間で、服役中に死亡した人は146名で、仮釈放された人の3倍です。この10年間については、無期刑受刑者の多くは獄死している、といえます。

無期刑は多くの人が考えているよりも重い刑罰です。よく知ったうえで、欧州などから求められている『死刑廃止』などについても考えてほしいと思います」

櫻井弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

櫻井 光政
櫻井 光政(さくらい みつまさ)弁護士 桜丘法律事務所
桜丘法律事務所 代表弁護士。第二東京弁護士平成21年度会副会長。日弁連日本司法支援センター推進本部スタッフ部会部会長。

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