夫に青酸化合物を飲ませて死亡させたとして、京都府向日市に住む女性(68)が、殺人の罪で起訴された。死亡した夫だけではなく、他の結婚相手や交際相手が次々と死亡していたと報じられ、世間の注目を集めている。
警察がこの事件を捜査するきっかけとなったのは、「司法解剖」だったとされる。夫の遺体に不審な点が認められたため、警察が司法解剖をおこなったところ、その体内から青酸化合物が検出されたのだという。
この司法解剖とは、どういう手続きで、どんな場合に実施されるのだろうか。医事法にくわしい鈴木沙良夢弁護士に聞いた。
●変死のケースで行われる
「病院で死亡が確認されるような一般的な死の場合、医師が『特に不自然な点がない』と判断すれば、病院から警察に連絡がいくことはありません。
司法解剖は、変死やその疑いのある死体を確認したときに、捜査機関が裁判所の許可を得て行う手続きです」
鈴木弁護士はこう述べる。おかしな点があれば、すべて司法解剖となるのだろうか?
「不審な点がある死体に対して、まず行われるのは『検視』です。
検視は、警察官や医師らが死体の様子を外側から調べるにとどまります。
そして、検視だけでは死因や死亡の時期がはっきりしない場合、『司法解剖』ということになります」
●検視との違いは?
司法解剖は「検視」とどう違うのだろうか。
「司法解剖は文字通り、遺体を解剖して調べる手続です。
そのため実施するためには、捜査機関は裁判所の許可(令状)を得なければなりません。
実際に解剖を行うのは、捜査機関から委託を受けた専門家である法医学者(多くは大学教授)になります。
司法解剖の結果は、鑑定書にまとめられます。結果的に事件性があると判断されれば、捜査機関が犯罪の捜査を行うことになります」
鈴木弁護士はこのように解説したうえで、「おそらく、今回のケースでも、死体に不審な点があったことを端緒として、検視→司法解剖というルートを経たのではないかと推測します」と話していた。