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2016年03月25日 11時17分

日本版「イノセンス・プロジェクト」始動、えん罪事件の弁護人がDNA鑑定めぐり議論

日本版「イノセンス・プロジェクト」始動、えん罪事件の弁護人がDNA鑑定めぐり議論
パネルディスカッションの様子

えん罪を訴える被告人や受刑者らを支援する研究者などの団体「えん罪救済センター」が4月から発足するのを記念して、死刑やえん罪について考えるシンポジウムが3月18日、東京・飯田橋で開かれた。えん罪問題について研究する学者のほか、「足利事件」や「袴田事件」など、著名なえん罪事件の弁護人をつとめた弁護士らが登壇し、意見を交わした。(取材・構成/藤井智紗子)

「えん罪救済センター」は、えん罪の救済活動をしつつ、誤判を防ぐ政策や法律の提言などをするアメリカの取り組み「イノセンス・プロジェクト」にならって、立命館大学法心理・司法臨床センターが中心となって、設立する。代表は立命館大学の稲葉光行教授。法律家や学者など専門家が連携して、えん罪事件の当事者に対する支援を無償で提供する。

●米国の刑事司法に大きな変化をもたらした

シンポでは、米国のイノセンス・プロジェクトに関わったことのある甲南大学の笹倉香奈准教授(刑事法)が、その意義を語った。「イノセンス」は、英語で「無実」という意味だ。

「イノセンス・プロジェクトは、1992年にアメリカのロースクールで始まった。当時のアメリカでは、自分たちの国にえん罪があると考えてもいなかった。全くの無実である人々がえん罪で有罪とされ、ときには死刑を言い渡されていた事実が明らかになり、アメリカ社会は大きな衝撃を受けた。

その後、アメリカでは刑事司法改革が進んだ。えん罪を防止するための捜査手法の改善や、えん罪が明らかになった人々への補償、えん罪究明のための法的な制度設計など、様々な改革が行われ、死刑制度への疑問が投げかけられるようになった。

イノセンス・プロジェクトは草の根的に始まったが、えん罪救済だけでなく、アメリカの刑事司法自体に大きな変化、いわば『イノセンス革命』を巻き起こしている」

●「日本では、まだDNA鑑定で無実を証明できる時代が来ていない」

その後のパネルディスカッションでは、えん罪の決め手になるといわれているDNA鑑定をめぐり、意見がかわされた。

笹倉准教授は、米国の「イノセンス・プロジェクト」でもDNA鑑定が重要な役割を果たしていることを指摘した。

「アメリカでは、DNA鑑定によってえん罪を晴らすことができた事件は337件。うち20件が死刑判決を言い渡されていた。DNA鑑定は科学的に無実を立証できる証拠だ。『無実の人は処罰してはいけない』という原則は、保守派も革新派も、どんな人も疑問をさしはさめないはずだ」

その一方で、4歳の女児を殺害したとして男性が起訴され、2010年に無罪が確定した「足利事件」で主任弁護人をつとめた佐藤博史弁護士は、「日本では、まだまだDNA鑑定で無実を証明できる時代が来ていない」と指摘した。

「足利事件では、たしかにDNA再鑑定が再審開始決定の決め手となったが、逮捕の決め手となったのも、同じくDNA鑑定だった。科学の証拠は正しく取り扱わないといけない」

袴田事件の弁護団に所属する戸舘圭之弁護士も、えん罪を晴らすためのDNA鑑定の重要性は認めつつも、「再審開始が認められた理由は、DNA鑑定だけではない」と語った。

戸舘弁護士は、日本の裁判において、DNA鑑定が絶対視されているわけではなく、他の証拠とあわせて総合的に検討して、再審を開始すべきかどうかを判断していると指摘。「DNA鑑定で無実にできる事件もまだまだ眠っているとは思うが、DNA鑑定によって決めることのできない事件も多い」と述べた。

(弁護士ドットコムニュース)

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