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「保護したつもり」グリ下少女2人と一緒にオーバードーズ→自宅に泊めた40代男性…法廷で語った“理屈”
グリ下(miko_neko / PIXTA)

「保護したつもり」グリ下少女2人と一緒にオーバードーズ→自宅に泊めた40代男性…法廷で語った“理屈”

道頓堀の「グリ下」に通っていた15歳と17歳の少女を、保護者に無断で自宅に泊めた──。

大阪府青少年健全育成条例違反などの罪に問われた40代男性に対し、大阪地裁は9月25日、求刑通り罰金30万円の有罪判決を言い渡した。

裁かれたのは、少女らを自宅に宿泊させたことなどだ。しかし、法廷で明らかになったのは、それだけではなかった。

被告人と少女らをつないでいたのは、市販薬などを大量に摂取する「オーバードーズ(OD)」だった。

被告人自身もODを繰り返し、少女らに薬を渡していたという。行方不明になった少女らを保護者が見つけたとき、薬とアルコールの影響で真っすぐ歩けないほど朦朧としていた。

自宅や学校に居場所を見つけにくい少年少女が集まるとされる、東京・歌舞伎町の「トー横」や大阪・道頓堀の「グリ下」。そこに集う若者の弱みにつけ込んだ性犯罪や「闇バイト」への勧誘なども社会問題となっている。

今回の事件も、判決だけを見れば「罰金30万円」だ。しかし、法廷で語られた経緯からは、グリ下とOD、そこに集まる少女と大人がつながっていく危うい実態が浮かび上がった。(裁判ライター・普通)

●少女と40代男性をつないだ「オーバードーズ」

被告人は身柄拘束されていない40代の男性。長身でメガネをかけ、清潔感も感じられたが、法廷では終始伏し目がちで、暗い雰囲気をまとっているように見えた。

起訴状によると、被告人は15歳のAさんと17歳のBさんを保護者の委託なく自宅に泊めた大阪府青少年健全育成条例違反のほか、コンビニ内で折りたたみナイフとメリケンサックを所持した銃刀法違反、軽犯罪法違反の罪に問われた。

被告人は、いずれの起訴内容も認めた。

検察官の冒頭陳述などによると、被告人は無職で、生活保護を受給して暮らしていた。罪種は明らかにされなかったが、服役前科があり、3年前に出所したばかりだったという。

Bさんとはグリ下で知り合い、AさんとはBさんを通じて知り合った。

3人をつないでいたのが、ODだった。

被告人はこれまで、2人にODのための風邪薬を渡すなどしており、自身もODをしていたという。

●17歳の誕生日、3人で「パキりたい」

事件の日は、Bさんの誕生日だった。

Aさんは「Bさんとパキりたい(オーバードーズをすること)」と考え、薬を渡してくれる被告人に連絡した。その後、3人でプレゼント交換などをしたあと、アルコールとともにODをした。

やがて終電を逃した少女2人は、家族に無断で被告人宅に泊まることになった。

保護者は行方不明届を提出。再会したとき、2人は薬とアルコールの影響で真っすぐ歩くこともできないほど朦朧としていた。カミソリによるリストカットの跡も多数あったという。

保護者の供述からは、それまでにも児童相談所に相談するなど、それぞれの家庭が苦労を抱えていたことがうかがえた。

それでも、娘の変わり果てた姿を目の当たりにした保護者は、被告人に強い怒りを向けた。

●白目をむき声を発しながら立ち尽くす

被告人が折りたたみナイフとメリケンサックを所持していたことが発覚した際にも、ODが影響していた。

「通行人に絡んでいる人がいる」

そんな通報を受けて警察官が駆けつけると、被告人は空を見上げたまま立ち尽くしていたという。

白目をむき、言葉にならない声を発しながら自分の髪を抜いて血を流したかと思えば、再び白目をむいて立ち尽くす──。

警察官が目にしたのは、そんな状態の被告人だった。

●人とのつながりを求める中で少女たちと出会った

弁護人からの質問で、被告人自身が抱えていた事情も語られた。

被告人は、統合失調症、パニック障害、躁うつ病、強迫性障害などを患っていたという。人の視線が気になり、周囲から聞こえる音もすべて自分に向けられたものではないかという思いを拭えなかったと話した。

服役を経て人間関係も失った。外出すれば何らかのトラブルに巻き込まれるのではないかという不安から、折りたたみナイフなどを持ち歩いていたという。

そんな不安を和らげるためにODをし、人とのつながりを求める中で、AさんとBさんに出会った。

ただ、今回の起訴事実は少女らを宿泊させたことなどに限られている。そのためか、少女らとどの程度の頻度で会っていたのか、どのような目的で一緒にODを繰り返していたのかといった点まで、法廷で詳しく掘り下げられることはなかった。

被告人によると、誕生日パーティーのあと、いったん少女らとは別れた。その後、AさんとBさんから「終電を逃した」と連絡を受けたという。

●少女を泊めたのは「保護したつもり」

放っておくわけにはいかなかった──。被告人は、少女らを自宅に泊めた理由をこう説明した。

「僕としては保護したつもり」

自宅に入れた際には、手首だけでなく足にも自ら傷をつけていたため、止血もしてあげたという。

「泊めるだけなら」という甘い考えがあったのか。あるいは、少女らの家庭環境を被告人なりに知っていたからなのか。保護者に連絡するという意識は薄かったようだ。

最後に2人への気持ちを尋ねられると、宿泊させたことを謝罪したうえで、「親の目を厳しくさせてしまい申し訳ない」などと述べた。

●「薬の知識は多少あるので…」

しかし、「保護したつもり」という被告人の説明に、検察官は厳しい目を向けた。

そもそも、年齢が倍以上離れた少女らと一緒にODをし、その意識や判断能力を混濁させたこと自体が、今回の宿泊につながった一因ではないか。

検察官は、被告人自身の関与の大きさを認識させるように質問を重ねた。裁判官も、被告人と少女らの関係について尋ねた。

裁判官:下手したら、自身の子どもでもおかしくない年齢の少女らとどんな関係だったのですか?
被告人:僕はオーバードーズできるなら誰でもよくて、グリ下はオーバードーズが蔓延していると聞いていて…。

裁判官:オーバードーズするための友だちという認識?
被告人:そうなんですが、彼女らには◯◯(特定の薬の名)のような強いのを使ってほしくない思いはあって。

裁判官:何を言いたいんですか?
被告人:薬の知識は多少あるので、強いのを使ってほしくないため、自身で薬を渡していました。

「強い薬を使ってほしくないから、自分が薬を渡した」

ODそのものをやめさせるという発想ではなく、使う薬を選ぶことで少女らを守ろうとしたという被告人。その独特な認識が浮き彫りになったところで、被告人質問は終わった。

●「罰金30万円」の背後にあったもの

裁判官は判決で、被告人について規範意識が低調であり、軽視できないと指摘。一方、今回問われた罪の量刑傾向などを踏まえ、求刑通り罰金30万円を言い渡した。

市販薬を使ったODをめぐっては、乱用を防ぐため、今年5月に年齢確認や販売数量の制限などを盛り込んだ法改正がおこなわれた。

しかし、市販薬だけを規制すれば問題がなくなるわけではない。生活保護受給者に処方された薬が使われたり、大人から若者へ薬が横流しされたりするケースもあり、薬の流通を完全に断つことは難しい。

「グリ下」や「トー横」と縁のない人にとっては、遠い世界の出来事に映るかもしれない。

だが、この法廷で語られたのは、居場所を求める少女たちと、人とのつながりを失った大人が、「オーバードーズ」を介して出会い、ともに薬を飲み、一夜を過ごすまでになった現実だった。

罰金30万円という判決の背後には、刑事裁判だけでは解決しきれない問題が残されている。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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