福岡県議会は10月1日、X(旧ツイッター)の匿名アカウントで不適切投稿を繰り返していた林泰輔議員に対して、問責決議案を賛成多数で可決したと報じられました。
報道によると、林議員は「みみず屋さん」という匿名アカウントで、福岡県議会の金銭授受問題を告発した吉松源昭議員やウェブメディアを攻撃するような投稿を繰り返していたとされています。
林議員をめぐっては、自民党県議団(会派)が9月29日に、林議員に会派の資格停止5カ月とする処分を決定していました。また、林議員は9月30日に会派の離断届を提出し、受理されていたとのことです。
不適切投稿を巡った一連の処分はどんな意味をもつのでしょうか。また、この他に法的責任が生じる可能性はあるのでしょうか。簡単に解説します。
●問責決議の意味は?会派資格停止で議員の身分はどうなる?
会派の資格が停止されても、議員としての身分は変わりません。
「会派」とは、議員が議会の中で作るグループです。地方自治法には政務活動費の交付先として出てきますが(100条14項)、内部の処分の規定はありません。
報道によると、会派は林議員に、議員総会への出席禁止や、警察委員会の副委員長などの役職を辞することを求めているそうです。
ただし議員としての報酬が減らされたりはしませんし、本会議での投票権もあります。
また、今回、林県議に対して吉松県議主導の案と、自民党県議団主導の案、2つの問責決議案が可決されました。
問責決議とは、簡単にいえば責任を問うための決議、という意味ですが、具体的な法的効力を有するものではありません。
地方自治法が議会に認める懲罰は、戒告、陳謝、一定期間の出席停止、除名の4つです(135条1項)。
問責決議はこれらの懲罰とは異なります。
ただ、議会で問責決議案が可決されたのに、法的な効力がないからといって完全に無視することは難しいでしょう。
林県議は今後何らかの対応を迫られると考えられます。
●では、法律上の責任は残るのか
会派内での処分とは別に、法的責任の問題は残ります。
たとえば刑事責任としては、私生活について未確認の情報を広め、社会的な評価を下げた場合は、名誉毀損罪(刑法230条1項、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)の問題になります。
また、事実を示さずに相手をののしる投稿は、侮辱罪(同法231条、1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金など)の問題になります。
もっとも、名誉毀損罪と侮辱罪はどちらも親告罪です(同法232条1項)。吉松議員やメディア側が告訴しなければ、起訴されません。
名誉を下げる投稿も、度を超えた罵倒も、民事の損害賠償の対象になりえます。
●政治家への批判なら、許されるのではないか
政治家への批判ということで、許される余地はあります。ただ、投稿した側から見ると、免責のハードルは高いといえます。
名誉毀損罪で罰されないのは、①公共の利害に関する事実で、②専ら公益を図る目的があり、③真実だと証明できること、という3つの要件を満たしたときです(刑法230条の2第1項)。1つでも欠ければ、原則として罰されます。
相手が公務員なら特例があり、①と②は満たされたものとして扱われ、残るのは③だけです(同条3項)。地方議会の議員も公務員に含まれます(刑法7条1項)。
ただし、職務や公務の公正さと関係のない純粋な私生活の話は、特例から外れると考えられており、その場合は①に戻ります。
公務員以外の事案ですが、私生活上の行いでも、その人の社会的な活動を評価する材料になるなら公共の利害に関する事実にあたる、とした判例があります(最判昭和56年(1981年)4月16日)。
●今回の投稿はどうなのか
今回の投稿は、吉松議員の私生活についてのものです。
職務や公務の公正さに関わるとはいいにくく、特例から外れて①から検討されそうです。
真実だと証明する責任は、書いた側が負います。
証明できなくても、投稿した時点で確実な資料にもとづいて真実だと誤信した相当の理由があれば、故意がないとして罪になりません(最大判昭和44年(1969年)6月25日)。
ただし裏付けのない伝聞や噂では、この相当の理由は認められにくいといえます。
また、ネット上の個人の発信だからといって基準は緩みません(最決平成22年3月15日)。
今回も、もとは一部の未確認の情報とのことです。
なお、私生活をさらす投稿は、仮に内容が真実だったとしても、プライバシー侵害として別に責任を問われることがあります。
小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)